92歳で、現役の料理家。桧山タミさん。
「いのち愛しむ、人生キッチン」は、自分の人生を考えさせられる本です。
日々の悩み、家の心配、仕事のストレス。悩みがつきませんね。
人生の大先輩タミさんの言葉で、もしかしたら元気づけてもらえるかもしれません。
「美味しいものを食べて、寝ちゃいなさい」
「きょうは、何もしなくていいのよ」
「無理に、手の込んだものをつくることを、責任と思わなくていいのよ」
日々の、肩コリコリの暮らしが、すこし楽になるかもしれません。
わたしは人生の先輩に「大したことないわよ」と、言われたような気がしてスーっと気持ちが軽くなりました。
人生はいつ終わりを迎えるか分かりません。だからこそ、残りの人生を、丁寧に生きて、もっと丁寧に「もの」と向き合って暮らしてゆこうと。
タミさんの本は、難しいことはなにも書いてありません。
「いのち愛しむ、人生キッチン」は、わたしの祖母のはなし、母との思い出と、重なる本でした。きっとこの本を読んだ方も、ご自分の郷里のこと、おばあちゃま、お母さまの言葉を思い出すのではないでしょうか。
優しくもあり、ピリッとスパイスの効いたタミさんの言葉。
「いのち愛しむ、人生キッチン」は、毎日、忙しく走り続けてちょっと疲れたとき。自分の生き方を見直すことができる本です。
桧山タミさんて、どんな人?
1926年、福岡県生まれ。日本の料理研究家の草分けと知られる故・江上トミ先生の愛弟子として、戦前・戦後を通じて学ぶ。
戦後、江上先生とヨーロッパ各国を巡った研修旅行を皮切りに、その後も折々に海外へと出向き、世界の料理の歴史や食材への見識を深める。
39歳で独立後、52歳で現在の「桧山タミ料理塾」を開設。素材にこだわり、愛情と自然の恵みを大切にする心が息づいた、昔ながらの日本の家庭料理を教える。
現在も「タミ塾」「桧山塾」の愛称で活動をつづけ、家庭料理とともに生活者としての知恵や心がけを塾生に伝える。
20代から70代まで幅広い層の生徒が通い、今日も台所に立つたくさんの女性を勇気づけている。
文芸春秋「いのち愛しむ、人生キッチン」より抜粋
桧山タミさんは、御年92歳。
現役でお仕事されているって、すごいですね!もう、ほんとうに尊敬します。
本の表紙が、また可愛いんです。お鍋を持ってニッコリ微笑むタミさん。
履物は、なんと運動靴です。
足元がしっかりしていないと、家の中でも危ないですものね。このような「姿勢」も、見習わなければと思います。
タミさんは、結婚されて6年で、医師だったご主人が他界。それから、息子さん2人を、懸命に育てました。
恩師である江上トミさんと、ヨーロッパを回った時は、貯金のすべてを使い、出発したそうです。
勇気がある方ですね。
そしてなんと、80代後半まで(!)、世界各国へ食べ物の冒険をされました。
江上トミさんから独立して、自宅で料理教室をはじめたころは、おもに、西洋料理を教えていましたが、46歳で、高級西洋料理をやめました。
からだに良い、「日本の家庭料理」の指導に切り替え、52歳で「桧山タミ料理塾」を開講しました。
それから40年、ずっと現役で台所に立たれています。
レシピがない、桧山タミさん「いのち愛しむ、人生キッチン」
この本には、レシピがいくつか書かれていますが、実際の桧山タミさんの教室は、レシピというものが存在しないそうです。
お天気や、生徒さんの体調で、お料理を作るそう。
教室に「あるもの」で、「さて今日は、何を作ろうかね?」という感じで、始まるそうです。
あるもので、「考える力」を養うためなのです。
タミさんの「いのち愛しむ、人生キッチン」の中で、「考えなさい。」と、書いてありました。
すぐに答えを求める自分には、耳が痛い言葉でした。
「旬のものを食べなさい」
季節の食材を食べることは、わたしたちのからだが、次の季節を迎える準備をするために、とても重要なんです。
いのち愛しむ、人生キッチンより引用
「春のたべものは、冬にたまった体の毒素を出してくれる。だから苦味があるのよ。」と、タミさん。
カジトラの母が、家族のために走りまわり、体に良い、春の芽を摘んできてくれたことを、思い出します。
春先、わたしが実家に帰ると、フキノトウで作ったフキ味噌、ウドの酢味噌、タラの芽の天ぷらを作ってくれた、母。
どれも、苦味があって、子供の頃はなじめませんでした。
でも、今思うです。「走り回って料理をする。」それは本当の意味での「ご馳走」でした。
「おやつは、オニギリで十分よ」
「おにぎりはどう?」
仕事がいそがしくて、子供に手作りのおやつを作ってあげられないと悩む生徒さんへむけた、タミさんの言葉。
そう言われた生徒さんは、どれだけ救われたでしょうね。
時間をかけて、手の込んだものだけがご馳走ではないことを、気付かせてもらいました。
「悩んだら雑巾がけでもしなさい」
じつは、ちょっと更年期の症状を感じている、トラカジ妻。
まいにち、体調と気持ちのアップとダウンの日々をくりかえしています。
いま、わたしの一番の薬が「そうじ」です。
「そうじ」は、無心になり、気持ちをリセットしてくれます。
悩んだら、雑巾がけでもしなさい。
人生の先輩に言われると、今、悩んでいる事なんて、もしかしたら大したことないんじゃないかなって、思えてきます。
不思議ですね。
「土をいじりなさい」
カジトラは、去年から野菜作りを始めました。
「家庭って、家の庭ってかくでしょう。台所を預かる人は、土と結びついていてほしいの」と、タミさん。
タミさんの本に影響を受けたから畑仕事を始めたわけではないのですが(笑)、たしかに畑で土と触れ合っていると、心が洗われます。
一番は、「食べ物への感謝」ですね。
料理道具と基本の調味料を学ぶことができる
タミさんの本で、竹のざる、まな板、包丁などの料理道具、そして基本の調味料について、いろいろ学ぶことができます。
専門書を読むより、生涯をかけて料理道具と触れ合っているタミさんのお話は、とても勉強になりますし、気付くことが多いです。
タミさんの言葉は、現代の便利な世の中への警鐘も
捨ててしまって、新しいものがあるからいいと言う人も、いますよね。
でも、何でも捨てて、また新しいものを手に入れているって、そんなこと繰り返していたら、日本人はいずれ困りますよ。
先の世はわからないでしょう。
「いのち愛しむ、人生キッチン」より
先の世はわからない。
怖いですね。これからの日本を見透かしているようです。
「安かったし、気に入ってなかったし、いいや。捨てちゃおう。」と、カジトラがよくやっていた事です。
ものを大切に使う。
これこそ、今の私たちが行わなければならない事ではないでしょうか。
まとめ「いのち愛しむ、人生キッチン」
桧山タミさんの「いのち愛しむ、人生キッチン」は、ベテラン料理家のレシピ本ではありません。
日常生活で、どうしても「なおざり」にしてしまうことを、改めて気づかせてもらえる本です。
カジトラは、自分の人生をちょっと立ち止まって考えてみようと思いました。
先人たちが当たり前におこなっていたこと。それは一概に、古臭いことではないということを、考えさせられました。
「楽をすること」や「便利なこと」は、幸せであるということと結びつかないのです。
タミさんの本は、それを気付かせてくれました。
なにか悩みがある人や、家のこと、仕事のことで行き詰っている人へ。
ときには「本」に頼って良いかもしれません。
人生の先輩に、「美味しい物を食べて、寝ちゃいなさい」、「きょうは、何もしなくていいのよ」と言われると、ひょっとしたら肩の荷がおりるかもしれません。
そして、それを基(もと)に、あなたは「何かをひらめく」はずです。ひらめきは人それぞれ違うと思いますが、何かを感じれば、それで良いのではないでしょうか。
タミさんの言葉は、心に奥に響きます。ちょっと立ち止まって、言葉のスパイスをかけてもらった気がしています。
あなたも、この本で「なにか」を感じられればいいなあと、願っています。
[紹介本]