男のファッションを学ぶにはどうしたら良いか。
本やテレビ、雑誌、洋品店ではない。
「映画」を観ることが一番の早道と、私は考える。
良い映画は、膨大な金額をかけて時代考証がなされているのでいい加減な制作をしておらず、登場人物の動きをみて、どのように着こなしているか「生きた勉強」をすることが出来る。
きょうは、私が今まで観てきた映画の中で「男のおしゃれ」が学べる映画「アンタッチャブル」をご紹介しよう。
「アンタッチャブル」ジョルジオ・アルマーニ
ジョルジオ・アルマーニが衣装の映画「アンタッチャブル」は、アメリカンカジュアル「アメカジ」が始まる前のファッションを学ぶことができる。
この映画は1930年代の禁酒法の話だ。
アメリカンカジュアルの定番「ブルックスブラザーズ」の創業は19191818年であるが、まだそれがが定着していないスタイルを観るのは面白い。
アンタッチャブルに登場するファッションは、非常にクラッシックである。
・スリーピース
・太めのスラックス
というヨーロッパ調のスタイルである。
この映画の見どころは「2ピースのスーツを誰も着ていない」ところだ。2ピースのスーツは、1930年以降に出始める。
エリオット・ネス(ケビン・コスナー)
財務省の役人である連邦捜査官。
ケビン・コスナーを採用した監督、ブライアン・デ・パルマの眼力は素晴らしい。
男前のケビン・コスナーのファッションをよく観察してほしい。
グレーのシングルスリーピーススーツ
ヨーロッパの香りが漂うスーツスタイルをよく吟味してほしい。
グレーのスーツは無地のシーンの時もあれば、地味なピンストライプを着ているときもある。
ダブルカフスのシャツ
まだボタンダウンがさほど流通していない時代。
シャツの色は白で、襟はナロースプレッドが特徴だ。ナロースプレッドとは襟の間が狭い(ナロー)ものをいう。
エリオット・ネス(ケビン・コスナー)は、作品中に微妙にシャツを変えている。白の時もあれば、薄い水色のストライプと変えているので、目を凝らしてご覧になっていただきたい。
またダブルカフスによって、スーツの品を高めているところにも注目してほしい。
立体的なネクタイ
幅広のネクタイを、ものすごく小さなノットでまとめているところを見てほしい。
現代のようにノットが大きい締め方はしていない。ディンプルもうまく作っていて立体的なタイの締め方をしている
ネクタイの柄は小紋やペーズリーであり、下地の色はピンク、薄いグリーン、赤。
男のネクタイは、この程度のバリエーションで良いと判る。
センタークリース帽子
センタークリースの帽子を必ず携帯しているところに着目してほしい。
西部開拓時代のなごりを感じさせるように、ツバは若干広めに作っている。カウボーイハットの面影を若干残しているのがクールだ。
今でこそスーツを着る時に帽子をかぶる習慣がなくなりつつあるが、この時代はセンタークリースの帽子を普通にかぶっていたのだ。
アクセサリー
アクセサリーも見逃さないでほしい。
四角い金時計が非常にクールだ。また彼は、金の幅広の甲丸(こうまる)リングをはめている。
それから黒で2つのバッグル付きバッグ(ベルト留め)は、この映画の影響でわたしは買ってしまったほどである。
またショルダーフォルスターも見ものだ。コルトガバメント(政府機関の者が持つ拳銃)を入れる拳銃入れも、男としてはあこがれるアイテムだ。
トレンチコート風の「バルマカーンコート」
エリオット(ケビン・コスナー)が着ているグレーのコートは、いわゆるトレンチコートではない。
これが面白い。
エリオット・ネス(ケビン・コスナー)は軍人ではなく、政府職員である。
したがって彼は、軍人が着るトレンチコートを着ないというのが、私の見解だ。
このこだわりも、見どころである。
まとめ:正義の味方と悪党の違いがわかる
映画1本で、男のファッションを学ぶことが出来る。
現在の多方面にわたる情報にまどわされることなく、本当のファッションを学ぶには映画を観ることだと私は考える。
「アンタチャブル」は、1930年代の禁酒法の時代の男のファッションを学べる素晴らしい映画である。
この映画のファッションの見どころは、微妙に変化はあるが「大きな変化を見せていない」ところである。
この微妙な違いが、「男のファッションの基本」であることがわかる作品である。
一見、着た切り雀のように見えるファッションでも、実は違う。
この微妙な変化がクールであることを、知っていただきたい。
また正義の味方は「シングルのジャケット」、悪党は親分らしい「ダブルのコート」というところが面白い。
映画の最後のシーンで、エリオット(ケビン・コスナー)と、ストーン(アンディ・ガルシア)が握手をして別れる。
ジャケットの袖から出ている「ダブルカフスが1cm」であることも、ぜひとも見逃さないでほしい。
カジトラ