農学博士の木嶋利男先生が紹介されている伝承農法、「サツマイモのつる苗の植え方」について、ご案内いたします。
昔農家さんは、野菜の性質や土地の気候を見極めて、現代よりずっと敏感に野菜を栽培してきたと言われています。
今回ご紹介する伝承農法は、サツマイモのつるの特徴を活かしたものですので、参考になさってください。
育ちが良くなる!サツマイモのつる苗の植え方|昔農家さんに学ぶ伝承農法
サツマイモは、飢饉に備えた救荒作物(きゅうこうさくもつ=一般の作物が不良で凶作の時にも生育して収穫できる作物)として育てられてきました。
昔の農家さんは、少しでもイモの収量を増やすために知恵を絞り、育ちが良くなるサツマイモのつる苗の植え方を編み出しました。
昔農家さんに学ぶ伝承農法
苗にするのは、芋に近き蔓の元のほうは悪し。
蔓の先のほうは、枯れやすし。中のよろしきところを、よく切れる薄刃にて、上は長く、下は短く切るべし天保13年 木下清座衛門「家業伝」
引用「やさい畑 2018年冬号」
つるの「中間部分」を植え付けるサツマイモ栽培
江戸時代から、サツマイモはつる苗を土に挿して栽培されていたようです。
上記の「家業伝」は、サツマイモのつる苗は、つるの中間部分を使いましょうという技術です。
現在のサツマイモの市販苗
現在、育苗店などで販売されているサツマイモ苗は、30~40cmほどの長さで、葉が7~8枚ついた つるの先端部分です。
伝承農法では、葉が4枚付いた「4節苗」にして植え付けます。
市販のサツマイモ苗の特徴
農学博士の木嶋利男先生によりますと、サツマイモのつるの先端は、細胞分裂が活発で生育が旺盛な反面、乾燥に弱く枯れやすいのが特徴です。
一方で、つるの株元に近い部分は、組織がかたく乾燥には強いものの、生育が鈍く、発根が遅いので、つる苗にするには不向きなのだそうです。
生育に最適な「つるの中間部分」
つる苗に最適なものは、適度に充実していて乾燥などのストレスに強い「つるの中間部分」で、これを植え付けますと、生長の勢いが持続します。
また、つるの中間部分は、土に挿すと根付きやすく、わき芽も早く伸び、よく育ちますので イモの増収につながります。
現代に応用できる4節苗
「家業伝」が示すサツマイモ栽培は、現在の市販苗にも応用できる考え方です。
つる苗には、葉が4~5枚ほど付いていれば良いので、先端部分と株元部分を切り落として植え付けます。
昔農家さんに学ぶ伝承農法「サツマイモの4節苗」の植え付け
サツマイモのつる苗の準備
購入したつる苗を用いる方法
市販のサツマイモのつる苗は、葉が7~8枚付いているものが多いので、先端と株元を切り落として、葉が4枚付いた「4節苗」を作ります。
芽出しをして苗にする方法
イモを芽出しさせて、つる苗を採取する場合も同じです。
栽培中のつるを苗にする方法
栽培中のサツマイモのつるが伸びてきたら、4節にカットして使う方法もあります。
サツマイモつる苗の植え付け方
4節苗(葉4枚・節4つ)を植え付けます。
ポイントは、葉2枚を土に埋め、残りの2枚を地上に出すことです。
苗の植え付け後、土に埋めた葉の付け根の部分から根が伸びて、イモができます。
なお、土に挿す つる苗の向きによって、イモの数と形は変わります。
寝かせ植え | 垂直植え |
イモの数 多め | イモの数 少なめ |
細長いイモができる | 丸く大きなイモができる |
伝承農法 サツマイモのつる苗「4節植え」レポート
2021年
市販のサツマイモのつる苗の先端と株元をカットし、中間部分を植え付けました。
このような短い苗で、果たしてイモが出来るのか、非常に不安でしたが、百聞は一見に如かず。チャレンジです。
4節の小さな苗にもかかわらず、順調に育ちました。
時々、ツル返しを行いました。
収穫です。
今年はすべての苗を垂直植えにしましたので、イモが丸々しています。
苗によっては2本くらいしか採れなったものもありますが、7~8本収穫できたものもありました。
2024年
2024年は、栽培中のサツマイモのつるから、4節使うことにしました。
カットしたつる苗です。
寝かせ植えにします。
サツマイモ畝の空いているところに植えました。
スペースの関係上、残念ながら今年は1苗しか植えることが出来ませんでしたが、追ってレポートいたしますね。
まとめ
農学博士の木嶋利男先生が紹介されている伝承農法、「サツマイモのつる苗の植え方」について、ご案内いたしました。
サツマイモのつる苗の先端と株元を切った苗を植え付けますと、サツマイモの育ちが良くなると言われています。
この栽培は、昔農家さんが行ってきた伝承農法で、現代の苗でも応用することが出来ますので、参考になさってください。
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[参考文献]
やさい畑 2018 冬号(出版:家の光協会)