大昔、私が手に入れた逸品の筆記用具をご紹介しよう。
私が君達にお伝えしたいことは、「若いうちに良質な小物を手に入れよ。」である。
1970年代、私がアメリカのファッションに興味を持ち出し始めたと同時に、欧米物が日本市場に一気になだれ込んできた。
車、バイク、クルーザー、ヨット、セントラルヒーティングの家など、10〜20代の私にとってどれも夢のようなものばかりであった。
昭和初期の古臭い物に囲まれて育った人間にとって、それらがどんなに胸がときめく品々であったかは、君達には到底 想像できないだろう。
舶来品は、当時の若者にとって夢のまた夢であったのだ。
若かった私は足りない頭で「小さいもの」なら手に入るだろうと思いついた。
途方も無い大きな買い物は、年をとってからでも良いではないかと。若い頃にしか集められない物もきっとあるのではないかと。
しかし結局、大きな買い物はこの年齢なっても叶わぬものが多かったが、今になると「小さいもの」を求めておこうと思った決意は正しかったと思う。
その証拠に、今となっては手に入れることが出来ない良質な小物を、数十年たった今でも愛用しているからだ。
紛失、損壊したものも多く有るが、手元に残る秀逸な筆記用具をご紹介したいと思う。
※ 本ページは個人の見解です
「男の小物」とは何か
まず、男の小物とは何であるかを、考えてみたい。
・持ち運びが可能な物とする。
・生活必需品であること。
・頑丈かつ繊細な伝統的デザインを備えること。
・国籍は問わず差別無し。
・自然素材に越したことはないが、あまりこだわらない。
・生活一辺倒ではなく、遊び心があること。
私はこのポリシーに外れるものは断固廃棄と誓い、これらが当てはまるようなものを少しずつ揃えていった。
大学生になった私は、一番最初に揃えねばと考えたのが筆記用具である。
そして、高校時代の何十本もあった筆記用具を全て廃却した。
ゼロからのスタートだ。
男の小物「筆記用具」
BIC社のボールペン
出典 Amazon
先ずは学生であったが故、授業を速記できる書き易い筆記具と言えばボールポイントペン以外無しとした。
となれば、もちろん「BIC社の速記用ボールペン」である。
そう、あの黄色い軸のやつだ。
インクは黒。なぜなら黄色の軸には黒キャップ以外無しと判断したからだ。
BIC社のボールペンは安価で恰好よく、手放せないものとなった。
ペンケースの中は、ほかに同じように黄色軸の2Bのおしりに消しゴムのついた鉛筆と赤鉛筆。
今では考えられないほど、良く勉強したな。
モンブランの黄色い万年筆「カレラ」
銀座散歩が好きになったのもこの頃かな。
少し先輩のミユキ族を気取り、よく銀ブラしたものだ。
何気なく入った日本橋丸善の筆記具売場(当時も同じ地下一階)で目に飛び込んできたのが、これまた黄色い軸の万年筆。それもBIC君と同じ黒キャップである。
良く見ると、キャップの先と軸端にモンブランスノウのマーク。
これは高くてダメだと諦めつつ値札を覗くと3,000円(昔の記憶で不正確だが)だった。
立ち食い蕎麦10杯我慢すればと、この時とばかりしわくちゃの500円札6枚をポケットから引っ張り出した(落語調で失礼。あまりに当時の記憶がまざまざと蘇るのだ。)。
ちなみに万年筆のペン先はステンレスで、インクはきれいなブルーインクカートリッジを愛用。
使い倒すとはこのことで、本当に良く使い込み、学生時代に2本消費した。
秀逸なものをご紹介しようなどと偉そうに書いているが、家探し(やさがし)したが見つからず。
現品は行方不明である。
[参考画像] Mont Blanc カレラ 522 イエロー(Amazon)
モンブラン585シリーズ
社会人になっても万年筆は必需品で、「モンブラン585シリーズ」を相当使い込んだ。
現代におけるデジタル時代のビジネスマンには想像もつかないだろう。
今も手元に残る585シリーズの一本を妻に譲ったが、インクの出が悪くなり、丸善日本橋店に持ち込んだところ、国内修理は不可能とのこと。
そこで急遽、本国ドイツヘ帰還修理となったが、驚くべきことにこれが全て無料であった。
現在も斯様なサービスが継続しているかは不明であるが、改めてモンブラン社のサービスの充実には舌を巻いた。
我が家で、ドイツ往復旅行を成し遂げたのはこのモンブラン君のみである。
モンブラン146・149
マイスターシュティック146
マイスターシュティック149
普段使いは先述したカレラと585シリーズの一辺倒だったが、私はモンブランの魅力にはまり、マイスターシュティック146及び149も求めた。
「若いのに生意気な、よくそんなお金があったね」と思われるかも知れないが、40数年前は私立大学の学費も安く、アルバイトで生活費を賄うことができたのだ。
私は働きに働いて、小物を買う資金をコツコツ貯めていった。(当時の肉体労働の時給は1,000円くらいだった)
振り返ると学生生活というものは、将来の不安など微塵も感じなく過ごせた誠に良い時代だった。
今の若者の心情とは著しく異なっていたと思う。
前置きが長くなったが、社会人になりモンブランのマイスターシュティック146はよく使用した。
149はビジネスの場では少し重厚過ぎたため、中年以降使うことにして温存した。
そして中年から老年となり、149をやっと使いこなせるようになってきたが、中年で149を求めることは、他の必要経費が非常に多くなるためほぼ無理だったろうと思うこの頃である。
若い頃の自分に感謝と自負している。
まとめ
私がおすすめしたい筆記用具ブランドは、ドイツ製品である。
デザインの良さ、使い勝手、剛健さなどに魅了され、私が筆記用具が好きになったのはモンブランの影響が強く、以降 カレラデザインのブラウン製電卓、同じくブラウンの電気髭剃りなど若い頃に手に入れ、今でもドイツ製品を愛用していている。
果ては、自家用車もドイツ製にこだわるようになったのは、やはり若い頃からの長い付き合いによるものだろう。
男のおしゃれは小物から始まると言っても過言ではない。数十年後の君自身のために、今から少しずつ筆記用具を揃えてみてはいかがだろう。
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