「曲げわっぱ」に、ごはんを詰めますと、とても美味しくなります。
わたしは木曽ヒノキの曲げわっぱを27年、大館の曲げわっぱを22年使っておりますが、これ以上のお弁当箱に出合うことはないだろうと思っております。
会社勤めをしていた頃、曲げわっぱのお弁当箱を洗っていると、「素敵なお弁当箱ですね」と、よく声をかけられたものです。
大半の方は、「お手入れが大変そうですね」「(お値段が)高そうなので、手が出ないんです」と、尻込みされていました。
しかし、そのようなことはありません。(と、当時も力説しておりました。)
わたしが曲げわっぱを愛用しているのは、「わっぱの美しさが好きで、お弁当が美味しくなるから」という理由だけなのです。
20年以上使っている曲げわっぱのお弁当箱について、記事にすることは初めてでしたので、秋田県の老舗「大館工芸社」さんに 使い方、お手入れ方法を具体的に伺いましたので、参考になさってください。
・曲げわっぱの特徴、ごはんが美味しい理由
・曲げわっぱの使い方
・おすすめの曲げわっぱの種類
・曲げわっぱのお手入れ方法
・わが家のお弁当をご紹介、詰め方のコツ
「曲げわっぱ」の特徴
曲げわっぱは、長く使うことができる優れた民藝(みんげい)です。
わが家で使っているものは、現在は解体されてしまった渋谷東急プラザで購入した秋田県大館市の「大館曲げわっぱ」です。
20年経った今でも木の良い香りがします。
ごはんが美味しくなる曲げわっぱ
曲げわっぱは、「小さなおひつ」です。
スギやヒノキの木の薄板を曲げて作られた木の箱は、通気性が良くお米から発散される水分をほどよく吸い取ります。
そのため時間が経過してもお米がパサパサになることはなく、しっとり美味しくいただくことができます。
そして曲げわっぱの優れているところは、お弁当箱の中の水分を調節してくれることです。
夏はごはんが傷みづらく、冬は固まりにくいため、一年を通して美味しいお弁当をいただくことが出来るのです。
会社勤めをしていた頃、冬の間 同僚はプラスチックのお弁当をレンジでチンして温めていましたが、私は温めることなく そのままでしたが、ごはんが冷めてもとても美味しくいただくことができました。
優れた抗菌効果
白木の曲げわっぱは、抗菌効果があります。
とくに天然の杉の木は抗菌効果が高く、お弁当箱に適していると言われています。
軽くて美しいデザイン
曲げわっぱの形の美しさは、日本の伝統工芸品の技術の高さを物語っています。
曲げわっぱは軽いものが多く、2段重ねのものでも 150~200gと荷物の負担になりません。
おすすめの曲げわっぱ3種類
曲げわっぱの種類を大きく3つに分けてご紹介いたします。
1.小さなおひつ「秋田杉の白木(塗装なし)」
秋田杉の白木の曲げわっぱは、日本の伝統工芸品の最高峰と言えるでしょう。
天然の木を使った曲げわっぱは「小さなおひつ」となり、最大限の機能を発揮するからです。
木の香りがお米に移るため ごはんがぐーんと美味しくなり、抗菌効果が高いので安心です。
また、天然の木はお米の余分な水分を程よく吸収しますので、冷めてもふっくらと美味しいです。
上の写真は秋田杉の「はんごう弁当」で20年以上使っておりますが、白い色から味わい深い色になってきました。
・ほのかな木の香りと柔らかい手触りを楽しめます。
・洗剤を使うと傷みが進みますので、水・お湯洗いでお手入れします。
・しっかり乾燥させる必要があります。湿り気で黒ずみが生じる場合があります。
2.抗菌性と耐久性がバツグン「漆(うるし)塗り」
木曽ヒノキも、白木の曲げわっぱと並ぶ日本の伝統工芸品です。
漆で塗装をしていますのので、曲げわっぱにシミを付けたくない方にオススメです。
また、漆(うるし)の利点は、抗菌作用にすぐれ、塗装を施すことによって「耐久性が高くなる」ところです。
漆の曲げわっぱは油を使ったおかずに強くなりますが、白木のわっぱよりお米の湿気を調整する作用が若干下がります。
上の写真のわっぱは、25年前に長野県の奈良井宿で購入したものです。
塗装が剥がれて木がすり減ってしまいましたが、これからもずっと使ってゆきます。
・漆の作用で、抗菌と耐久性、防腐性に優れています。
3.機能性重視「ウレタン塗装」
木の表面を樹脂コーティングしたウレタン塗装の曲げわっぱもあります。
水や油を弾きますので、わっぱにシミを付けたくない方にオススメです。
樹脂コーティングのため、油を使ったおかずに強く、洗剤で洗うことが出来ますので この曲げわっぱが最も扱いやすいと言えるでしょう。
お手入れに手間がかからず、機能的に抜群であることが最大のメリットですが、木の香りや、お米の水分を調整する効果はあまり期待できません。
・汁気のあるおかずや揚げ物もそのまま入れることが出来ます。
曲げわっぱの使い方について
使いはじめ
おろしたての曲げわっぱは、木が乾燥しています。
そのため ごはんがくっ付きやすい状態になっています。
対策は、「おひつ」と同じ要領で、内側を水で濡らし、ふきんで水分を拭き取ってからごはんを入れますと、くっつきにくくなります。
曲げわっぱは、ふつうのお弁当箱です
曲げわっぱは、取扱いに手がかかるものと思われがちですが、普通のお弁当箱と同じ扱いで構わないことが分かってきました。
ただし、材質が「木」のため、次の点に気を付けてみてくださいね。
電子レンジ・食器洗浄機・食器乾燥機は使わないで
曲げわっぱは木製品ですので、電子レンジ、食器洗浄機、食器乾燥機は使わないようにしましょう。
フライなどの油もの、OKです
個人的な見解ですが、曲げわっぱは「お弁当箱」ですので、入れてはダメなおかずはない考えております。
わが家は、フライなどの油ものも気にしないで入れております。
汁ものは気を付けて
曲げわっぱのつくりは、フタを乗せるだけのものが一般的で、漏れ防止機能が付いておりません。
そのため、汁気のあるおかずは注意が必要です。
この対策につきましては、あとの章「わが家のお弁当をご紹介、詰め方のコツ」にてご紹介します。
曲げわっぱに関する疑問を秋田の大館工芸社さんにうかがいました
長年曲げわっぱを使っていて取り扱いに迷っていた疑問を、秋田の大館工芸社さんに伺い、ご回答を頂戴いたしましたので、参考になさってください。
疑問1:冷蔵庫に入れていいの?
大館工芸社さんでは、曲げわっぱを冷蔵庫に入れて保存することを推奨されていないようです。
曲げわっぱは「保存容器ではない」ということですね。
低温で乾燥している冷蔵庫に入れた曲げわっぱは、呼吸がしづらくなり、木が縮んでしまう可能性があるということです。
長時間、冷蔵庫に入れるのは控えたほうがよさそうですね。
疑問2:曲げわっぱを洗剤で洗っていいの?
漆塗り、ウレタン塗装の曲げわっぱは洗剤を使って洗っても問題はありません。
しかしながら「白木」の曲げわっぱは杉が洗剤を吸ってしまいますので、洗剤は使わないほうが良いそうです。
水・お湯で洗いましょう。
わっぱの種類 | 洗剤のお手入れ |
白木 | × |
漆塗り | 〇 |
ウレタン塗装 | 〇 |
曲げわっぱのお手入れ方法
大館工芸社さんのアドバイスをもとに、曲げわっぱのお手入れ方法をまとめましたので、参考になさってください。
基本的に普通の食器と同じ扱いで、難しいことはありませんのでご安心ください。
曲げわっぱを上向きにして乾燥させる(水気を上に逃がす)ことがポイントです。
白木の曲げわっぱのお手入れ方法
いきなりスポンジでゴシゴシ洗うより、最も汚れを落としやすくする方法です。
白木の曲げわっぱのお手入れ
1.お弁当箱をぬるま湯に入れ、10~30分ほど漬けます。
2.スポンジで洗います。
3.すすぎ終わったら、曲げわっぱの本体とフタを下に向けて水気を切ります。
4.水滴がなくなったら、上向きにして乾燥させて終わりです。
漆、ウレタン塗装の曲げわっぱのお手入れ方法
白木の曲げわっぱと異なる点は、洗剤OKというところです。
1.お弁当箱をぬるま湯に入れ、10~30分ほど漬けます。
2.洗剤を付けてスポンジで洗います。
3.すすぎが終わったら、曲げわっぱの本体とフタを下に向けて水気を切ります。
4.水滴がなくなったら、上向きにして乾燥させて終わりです。
ふきんで拭いた後、曲げわっぱを上向きにして乾かせる方法でも構いません。
一晩置いておきますと翌朝には乾いていますので、再び使うことができます。
わが家の曲げわっぱ弁当をご紹介、詰め方のコツ
曲げわっぱのお弁当箱は、詰めるのが難しそうと思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、次の点を参考になさってください。
コツ1「入れる順番」
体積の大きいものから順番に入れてゆきますと、詰めやすくなります。
ごはんの上におかずをのせますと、多少の汁ものやソースが付いているおかずも、ごはんが吸ってくれますので「もれ」の心配が軽減します。
コツ2「きれいに見せる3つのポイント」
2.出来るだけ同じ高さにしましょう
おかずの色を3色以上使いますと美味しそうになります。
また、同じ高さに詰めますとバランスがよく見えます。
おかずが動かないようにギュウギュウ詰め込みます。
葉っぱの上にハンバーグをのせて、ケチャップのもれをカバー。
曲げわっぱは、ピクニックでも大活躍しております。
20年以上使っておりますので、白木のわっぱの中に、から揚げも普通に入れちゃっています。
日本製の曲げわっぱのおすすめは?
日本製の曲げわっぱもピンからキリまであり、国産イコール上質のわっぱとは言い切れないようです。
わたしは秋田県大館の曲げわっぱと、長野県の木曽ヒノキの曲げわっぱを購入しましたが、どちらも20年以上 使っていられるのは、本物の材料と、本物の職人さんの手による作品だったからではないかと考えております。
杉・ヒノキの曲げわっぱがおすすめ
わが家で長年使い続けている、「秋田県大館市の天然スギで作った曲げわっぱ」と「長野県塩尻市奈良井宿の木曽ヒノキで作った曲げわっぱ」は、耐久性が高いのでおすすめしたいです。
老舗のお店で購入してほしい
大切な曲げわっぱ。長く使ってゆきたいですね。
老舗の販売店は「メンテナンス」や「塗装の塗りなおし」のアフターケアが充実していますので、生涯の愛用品として使うことが出来るでしょう。
今でも覚えています。
25年前に購入した2段重ねのはんごう弁当は、渋谷の東急プラザで8,000円でした。
お弁当箱に8,000円は大変痛い出費でしたが、結果的に 決して高い買い物ではなかったと思います。
ご参考
夫が定年退職してお弁当を卒業ましたので、木曽の曲げわっぱを小物入れにしました。
玄関に、二段重ねに置いて、よく使う物を入れています。
蓋をしますので、見た目もさっぱり。
今でも、重宝しております。
まとめ
昨今、保温性の高いものや、もれないタイプなど、機能的なお弁当箱を使う方が多くなっているようです。
一方で、曲げわっぱのような日本の伝統工芸品が見直され、暮らしの愛用品として使われる方もいらっしゃいます。
わたしが会社勤めをしていた頃、曲げわっぱを洗っていると、必ずといっていいほど「素敵なお弁当箱ですね」と声をかけられました。
その心は、曲げわっぱを使っていない方も「魅力と美しさを感じている」ということですね。
あなたが、素敵な曲げわっぱに出合えることを願っております。
[老舗販売店の曲げわっぱ]
[関連記事]
曲げわっぱの素材「秋田杉」は、ずっと呼吸をしていますので、冷蔵庫に入れると呼吸の妨げになる場合があります。また、冷蔵庫の中は比較的に湿度が低いため(乾燥しているため)、場合によって木が縮んでしまう恐れがあります。長時間保存する場合でなければ、悪影響はないと思われますが、上記のような現象も起こりえますので、お取り扱いにはお気をつけください。