昔からワインが好きである。
4~50年前はコルクを開けるのに苦労し、メーカー付録の、あのT型のスクリュー式オープナーは、一発で抜けたためしが無く、コルクが半分くらいで割れてしまい、残りはビンの中に落とし込んでいつも飲んでいた。
当時ワインを空けるのはこんなものだと思っていたが、私はどうもあの付録品を好まなかった。
そしてある時、2つのワインオープナーと出合い、ずっと大事に使っている。
今日は、私のワインオープナーの歴史(いつものウンチク)について、耳を傾けていただきたい。
スイスビクトリノックス社製のアーミーナイフ
第二の黒船来航
40数年前、欧米の小物が一気に日本になだれ込んできた。
そこで出合ったのが、スイスビクトリノックス社製のアーミーナイフである。
当時の日本は、刃物と言えば肥後守(ひごのかみ=小刀の一種)しかなっかったような時代であったため、私は斬新なデザインのナイフにビックリした。
この衝撃は、黒船を見た初めて見た侍と同じ衝撃だと思う。
今の若者にはおそらく想像できないだろうが、当時の欧米の小物は、まさに二度目の黒船だったのだ。
その上、このアーミーナイフはそのヴァリュエーションたるや非常に多岐に渡り、選ぶのが非常に困った記憶がある。
1本でワーゲンビートルを分解できる逸話付き
結局、私がスイスビクトリノックス社製のアーミーナイフの選択の基準になったのは、持ち前の「逸話好き」からだった。
私のチョイスはチャンピオンモデル。
これ一本で、ワーゲンビートルが完全に分解・組立てが出来ると言う伝説に私は飛びついた。
ダットサンさえ手に入れられない若造が、あのビートルを手玉にとるナイフなど、ビートルの上手(うわて)をいく存在と踏んだのだ。
チャンピオンモデルは高価だったが、その機能の1つに「ワイン用スクリュー」が有ったのだ。
スイスの兵士が戦場でワインを嗜んだ姿を彷彿としながら、相も変わらずコルク半分をビンに落とし込みながら一人で飲んでいたころがなつかしい。
バタフライ コークスクリュー ワインオープナー
「バタフライ」とも呼ばれるテコ式のワインオープナーが出てきたのは、今から30年くらい前だろうか。
この新たな出現に、私はふたたび驚かされた。
これを使うとコルクが割れず非常にスムーズで、開けるのに要する時間も半分くらいに短縮された。
しかし私はその無機質な鉄素材を好むことができず、相変わらずアーミーナイフを使い続けていた。
※ 上の写真は妻が友人にいただいたものであるが、女性にはこのタイプが使いやすいようだ。
最後の出合い「シャトー・ラギオール」
私のワインオープナー 最後の出合いはバブル期だった。
接待で、とあるフランス料理店でこれに出合った。
当時はマナーもわからず、箸を誂えていた時代。
ウェイター(今で云うソムリエ)が、華麗に操る梃子式のオープナーを見てしまったのだ。
聞けばフランスのメーカー「シャトー・ラギオール」とのこと。
その優美なフォルムと素材に魅了された私は、無理をして手に入れた。
それから30年、ずっと使い続けている。
昔ながらのラギオールナイフ
昔ながらのラギオールナイフは、3点取り付けられている。
・ナイフ
・千枚通し
・コルクスクリュー
このナイフの部品は熟練された職人の手によって作られているのだが、やはり私は利便性・機能性・大量生産品より、美しいものを手元に置いておきたい性分である。
まとめ
シャトー・ラギオールは、1850年創業の刃物メーカーのブランドである。
老舗メーカーのこれほど完成されたナイフは相当な歴史があるものと思っていたが、実はまだ30年足らずである。
本場の欧米人も、このワインオープナーに関しては私と同じ道を辿ったらしい。
シャトー・ラギオールは新しいモノにも歴史を匂わせる素晴らしさを表現できるというお手本である。
君がワインオープナーをお探しならば、是非とも「シャトー・ラギオール」をお使い願いたいが、近年、類似の粗悪品が出回っている模様であるので注意が必要だ。
最後に、「ソムリエナイフ」という単語は和製英語で外国では通用しない。
正しくはウェイターズナイフ、ウェイターズフレンドと呼ぶことを、覚えておいてほしい。
以上、最後まで老人のウンチクにお付き合いいただいた君に、心からお礼を申しげたい。
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