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1月の農事|昔農家さんから学ぶ農作業

新しい年の始まりです。

本年も、あなたのご健康とご多幸を、お祈り申し上げます。

一年の計は正月にあり。

一日の計は鶏鳴(けいめい)にあり。

私たちにとっての1月は、旧暦の時代は、晩冬「師走」でありました。

旧暦12月は、一年が満ちてゆくという考えで「年満月(としみつづき)」、旧年を取り除くという意味で、「徐月(じょげつ)」、そして「春待月(はるまちづき)」とも呼んでいます。

最も寒さが厳しくなるこの季節、春を待つ思いは、時代は変われど 私たちも先人も同じです。

今回は、昔農家さんから学ぶ、1月の農作業についてご紹介いたします。

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昔農家さんから学ぶ1月の農作業について

毛利元就の言葉

戦国武将であった毛利元就は、「一年の計は春にあり、一月の計は朔(さく=1日)にあり、一日の計は鶏鳴にあり」という言葉を残しています。

一年、一月、一日それぞれの最初にこそ、計画を立てることが肝心であることを意味しています。

一年の計は春(正月)にあり

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1月は、今年一年の、農作業の記録表の準備に取り掛かりましょう。

表計算ソフトや、5年~10年記録することが出来る手書きの日記を使う方法もおすすめです。

記録表には、天気やその日行った農作業、購入した種や苗、肥料、道具の価格などを記してゆきます。

同じ帳面を数年使ってゆきますと、前年の農作業とを比較することができ、使い続けてゆくうちに、あなただけの「農事歴」として、たいへん役立つようになってゆくと思います。

なお、昔農家さんは、旧暦1月(新暦2月)に、その年の栽培計画を立てていましたので、具体的な方法につきましては、来月ご紹介いたします。

1月の農作業

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※地域によって前後します。
参考文献 久保田豊和著「新版 暦に学ぶ野菜づくりの知恵 畑仕事の十二ヵ月」)

1月の農事歴

私たちは現在 新暦(太陽暦)にて暮らしておりますが、江戸時代以前の農家さんたちは、旧暦にて農作業を行っておりました。

現代においても旧暦の農事を参考にしますと、野菜づくりの良き指標となるかと思いますので、ご紹介いたします。

1月の農事歴

1日 雪下麦を出す
2日
3日
4日
5日
6日 小寒(旧暦12月1日頃)
7日 芹すなわち栄え
8日
9日
10日 水温かをふくむ
11日
12日
13日
14日
15日 雉始めて鳴く
16日  
17日
18日
19日
20日
21日 大寒
22日 フキの花咲く
23日
24日  
25日 沢水凍りつめる
26日
27日
28日
29日
30日 鶏始めて鳥屋に就く 
31日

参考文献 久保田豊和著「新版 暦に学ぶ野菜づくりの知恵 畑仕事の十二ヵ月

雪下麦を出す(ゆきふりむぎをだす―新暦1月1~4日頃)

雪の下で麦が芽を出し始める時期です。

そして、ニンジン、ゴボウ、ハクサイなど、冬野菜の収穫もこの頃で、昔農家さんはこの時期に畑を片付けたり、耕したりしました。

「雪下麦を出す」は、七十二候で、麦は別名「年越草(としこえぐさ・としこしぐさ)」といいます。

この名前は、秋に発芽した麦が冬を越し、次の年になって実を結ぶことに由来しているのだそうです。

小寒(しょうかん ― 新暦1月5~6日頃)

寒の入り

一年でもっとも寒くなる時期に入ることを「寒の入り」といいます。

その先の節分までが「寒の内」で、これから寒さが一層厳しくなります。

「暦便覧」によりますと、冬至を過ぎ、陽の気が起こると、それに対抗して陰の気が強くなり、ますます冷えると考えられたようです。

※ 「暦便覧」 1787年(天明7年)に太玄斎によって出版された暦の解説書。

芹すなわち栄え(せり すなわち さかえ ― 新暦1月5日~9日頃)

冬の寒気の中で、芹(せり)の葉が、みずみずしく開き始める頃です。

寒芹(かんぜり)

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芹の語源は、「競り合うように生える」様子からきているという説があるようです。

現代の私たちは、ちょうどこの頃に七草粥をいただきますが、七草は、旧暦の1月7日の行事ですので、本来は立春を過ぎた来月です。

つまり、芹の旬は春ということになります。

しかしながら昔農家さんは、寒の内に採れる芹を、寒芹(かんぜり)・冬芹(ふゆぜり)と呼んで珍重していたそうです。

芹の独特の香りは春を感じさせますね。

昔農家さんも、春への思いが溢れていたかもしれません。

若菜摘み

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秋の七草は観賞用ですが、春の七草は食用で、この七草を摘んでくることを「若菜摘み」といいます。

現代の私たちは、お正月のご馳走で疲れた胃をやすめるための食事として受け継がれていますが、昔農家さんは、新春に芽生えた若芽をいただくことで、新しい生命力を身に付け、無病長寿を願いました。

―春の七草―

1.芹(せり)
2.薺(なずな)
3.御形(ごぎょう)
4.繁縷(はこべら・はこべ)
5.仏の座(ほとけのざ)
6.菘(すずな)
7.蘿蔔(すずしろ=大根)

古くは、正月最初の子の日(ねのひ)の行事だったようですが、中国からはいってきた「人日の節句(じんじつのせっく)」と結びつき、旧暦1月7日に行われるようになったそうです。

寒蜆(かんしじみ)

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現代でも身近である「蜆」は、春が旬とされているようです。

この時期の蜆は「寒蜆」、土用の時期を「土用蜆」と呼び、蜆は古くから肝臓の薬として用いられていました。

とくに気候の厳しいこの時期の蜆は大きな力を与えてくれるようですので、今月は蜆をメニューに入れてみられてはいかがでしょうか。

水温かをふくむ(みずあたたかをふくむ ― 新暦1月10日~14日頃)

土の中に陽気が生じ、凍った泉が湧き出し始める時期です。

水温かを含む

水温かをふくむは、「水泉動」とも書き、地中で凍っていた水が動き始める時期と解釈されますが、実は、地下水は一年を通して温度変化が少なく、普通は凍ることはないのだそうです。

寒い時期の水が、かえってあたたかく感じることがあるように、昔農家さんはそれを氷が解け始めたと思ったのかもしれませんね。

寒九の水(かんくのみず)

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昔農家さんは、寒の時期の水を「薬」として扱っていたといわれています。

寒水でお餅をついたり、お酒を造ったり、薬を飲むのにも特別の効き目を発揮すると考えていたのだそうです。

特に、寒の入りから九日目を、「寒九」と呼び、効果が増すといわれており、この日に降る雨は「寒九の雨」といって、豊作の兆しとされていました。

鰤(ぶり)

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出世魚の鰤は、この時期 大変美味しくなりますね。

全長70cmを越えて鰤と呼ばれるようになるまで、4年ほどかかるそうですが、先人は おめでたい時に鰤を食べていたようです。

・関西地方 つばす→はまち→めじろ→ぶり
・関東地方 わかし→いなだ→わらさ→ぶり

など、地域によって、出世してゆく名前が異なります。

鏡開き

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1月11日は、鏡餅を下げる日です。

もともとは、1月20日に下げていたようですが、徳川三代将軍 家光の月命日にあたるため、11日に変わったのだそうです。

鏡餅は、刃物を使うと縁起が悪いので、槌(つち)で割って頂くのが習わしです。

先人は、餅を割ると表現せず、「開く」と言い換えていたことから、言霊を信じていたことがうかがえますね。

なお、槌で割った餅のかけらを、「欠き餅」と呼んで、焼いたり揚げたりしたものが「おかき」の始まりと言われています。

雉始めて鳴く(きじ はじめて なく ― 新暦1月15~19日頃)

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キジの雄が、雌を求めて鳴き始める時期です。

春の野にあさる雉の妻恋に 己があたりを人に知れつつ

大伴家持

(春の野で、餌をあさる雉は、妻が恋しいと鳴くから、自分の居場所を人に知られてしまうのだなあ。)

雉は、古くから狩猟の対象とされていた鳥でした。

大伴家持は、「恋しい妻を呼ぶ声なのに、自分の居場所を人に知られてしまう」と、雉をあわれんで詠んだ歌なのでしょう。

葱(ねぎ)

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現在、年中 出回っている葱ですが、本来は 寒い時期が旬です。

葱は、古くは臭気を表す「気(き)」と、呼ばれていました。

やがて、根を食べる「き」ということで、「ねぎ」と呼ばれるようになったと言われています。

葱の白い部分も葉の一部ですが、昔農家さんは根っこだと思っていたようですね。

昔、葱は食用のほかに、風邪薬としても用いられたり、強い生命力と独特のニオイから、邪気や疫病を追い払うと信じられていたそうです。

葱を首に巻く 風邪の治療は、その名残かもしれませんね。

大寒(だいかん ― 新暦1月21日頃)

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一年のうちで、最も寒さが厳しい時節です。

フキの花咲く(新暦1月20~24日頃)

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蕗の薹(ふきのとう)のツボミが開き始める時期です。

寒天(かんてん)

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冬の寒空のことを「寒天」といいますが、私たちは乾物の寒天を、連想するのではないでしょうか。

寒天は、海藻の天草(てんぐさ)を煮て固め、凍てつく寒気に晒して凍らせて、再び天日で溶かすという作業を繰り返して作ります。

この寒天は、参勤交代途上の島津侯が食べ残した心太(ところてん)を戸外に捨て、偶然できたものという説があります。

まさに、寒い天からの贈り物のようですね。

沢水凍りつめる(さわみずこおりつめる ―新暦1月25日~29日頃)

沢の水がびっしりと凍りつめる頃です。

氷の声

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冷え込みがことさら厳しいこの時期、昔農家さんは「霜の声」「雪の声」そして、「氷の声」と、自然のさまざまな音を「声」と表現していました。

とても繊細な感覚ですね。

現代の私たちも、その感覚を忘れないでいたいですね。

蝋梅(ろうばい)

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最も寒いこの頃に咲く蝋梅。

蝋細工のような淡い黄色い花びらを見て、昔農家さんは 春を待ち望んでいたのかもしれませんね。

鶏始めて鳥屋に就く(にわとりはじめてとやにつく― 新暦1月30日~2月3日頃)

ニワトリが産卵のために小屋に入る時期です。

鶏(にわとり)

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七十七候は、鶏が卵を産むために鳥屋(とや)にこもるという意味の「鶏始乳」で、締めくくられます。

庭に放し飼いにされていた鶏は、「庭つ鳥」。これが、鶏の語源のようです。

鶏は、人との生活に深い結びつきのある鳥なのですね。

まとめ

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1月の農作業と農事歴について、ご案内いたしました。

昔農家さんは季節と共存しながら農作業を行っていました。

年が変わりますと、新しい事・物にこだわりがちですが、すべてをそのようにしなくても良いかもしれません。

1月1日は、「雪下麦を出す」です。

冬越しをした野菜とともに、あなたが「実りのとき」を迎えられる一年であることを、お祈りいたします。

[参考文献]

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やさい畑 2020年冬号別冊付録の1月

[引用した画像]

Andreas Eriksson

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キッチンガーデンのこと野菜づくり
この記事を書いた人
カジトラ

関東在住の専業主婦です。
夫と二人暮らし。
2023年の春、海に近い地域に移住しました。

家族の介護、某シンクタンクで馬車馬のように働き詰めだった日々に区切りをつけ、現在は農学博士 木嶋利男氏が提案するコンパニオンプランツ栽培で野菜を育てています。

文明の利器を取り入れつつも、古き良きモノ・慣習を大事にしながら暮らしてゆくことを目指しています。

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