農学博士の木嶋利男先生が紹介されている、「胚軸切断挿し木の方法」について、ご案内いたします。
野菜の苗の胚軸をカットしますと微生物が定着し、病気の抵抗力が高まり苗が強くなり、収穫量が増えると言われています。
昨年は、ナス・キュウリ・トマトを種からまいて胚軸切断挿し木を行ってみましたが、根が活着せず失敗に終わりましたので、今年も挑戦しようと思っております。
なお この方法は、野菜の本葉の数によって挿し木をする時期が異なります。
各野菜のカットに適した時期もあわせてご紹介いたしますので参考になさってください。
胚軸切断挿し木法とは?
野菜の幼い苗の胚軸を切断しますと、微生物が定着して病気の抵抗力が高まると言われています。
※ 胚軸は、芽が出た苗の茎のことをさします。
本葉3枚までにカットします
野菜によって、切断する時期・苗を育てる時の温度管理が異なりますが、木嶋先生によりますと、植物は本葉が開いてから3枚までの間であれば、胚軸部から微生物を取り込むことが出来ます。
病原性のない微生物を取り込みます
カットした苗を水に浸した後 培養土に挿し木をし、病原性のない微生物を苗の体内に取り込ませるのが、この育苗のポイントです。
胚軸切断挿し木法のメリットとタイミング
胚軸切断挿し木法のメリット
木嶋先生は、胚軸切断挿し木法のメリットを3点紹介されています。
🌱 生育が強勢になります。
🌱 収穫量が増えます。
胚軸切断挿し木法のタイミング
胚軸切断のタイミングは野菜によって異なりますので、下の表を参考になさってください。
野菜の種類 切断時期 育苗温度 🍅ナス科 トマト、ナス、ピーマン、トウガラシ 本葉2枚 23~28℃ 🥒ウリ科 キュウリ、スイカ、カボチャ、ゴーヤ、メロン、ズッキーニ 本葉0.5枚 23~28℃ 🌱マメ科 エダマメ、インゲン 本葉1.5枚 23~28℃ 🥦アブラナ科 ハクサイ、キャベツ、ブロッコリー 本葉1.5~3枚 18~23℃ 出典 農薬に頼らない病虫害対策 木嶋利男著
ナス科野菜
防除できる病気
萎凋病、半身萎凋病、青枯病などを防ぐことが出来ます。
胚軸切断のタイミング
ナス科野菜は、本葉2枚のタイミングで胚軸をカットします。
ウリ科野菜
防除できる病気
つる割病などを防ぐことが出来ます。
胚軸切断のタイミング
ウリ科野菜は、本葉0.5枚(本葉1枚が完全に開き切っていない状態)のタイミングで胚軸をカットします。
アブラナ科野菜
防除できる病気
根こぶ病を防ぐことが出来ます。
胚軸切断のタイミング
アブラナ科野菜は、本葉1.5~3枚のタイミングで胚軸をカットします。
胚軸切断挿し木法のやり方
本葉の枚数を確認して胚軸を切ります
野菜の種類によって 胚軸をカットするタイミングが異なりますので、適した時期にハサミ、ナイフで切断します。
水揚げします
挿し穂の切り口をきれいな水に2~3時間つけて、しっかりと水分を吸い込ませます。
挿し穂を土に挿します
あらかじめ湿らせておいたビニールポットの土に挿します。
棒の先で穴を開け、挿し穂を挿して しっかりと土を密着させます。
この段階までに胚軸にさまざまな微生物が定着、共生することで、野菜全体の抵抗力が高まり、病害虫に強くなります。
いつもどおり育苗します
苗を挿したあとは、いつもどおりに育ててゆきます。
ただし、時期や環境によって そのまま枯れてしまうこともあります。
対策として、何カ所か穴を開けたビニール袋を覆い、日中は多少しおれる程度に温度と湿度を保つように育てます。
根が活着しましたら、ビニール袋を取り除きましょう。
挿し木をした後どうなるの?
挿し木をした苗は、最初は生育が止まりますが、胚軸から新しい根が出て次第に生長が勢いが増してきます。
木嶋先生によりますと、途中からほかの株の生育を追い越すほど強勢に育ってゆくそうです!
丈夫になった苗は、結果的に実付きがよくなり 収穫量が増えます。
2022年 胚軸切断挿し木法レポート
アブラナ科
2022年4月6日
春キャベツの種をまきました。
本葉が1~2枚になりましたので、今回も胚軸をカットして苗を育ててみます。
今回は、すべて胚軸をカットしてしまい、普通栽培と比較することができなくなりました(涙)。
土を入れたポットに挿し込みました。
2022年4月14日
胚軸をカットした苗をポットに挿し込みますと、数日間 苗が弱ります。(そのまま枯れてしまうものもあります。)
上は、胚軸をカットしたものを土に挿して6日経った画像です。
今回は、すべてダメになってしまいそうな予感がします。
2022年4月26日
12日経ちました。
苗が元気になってきたようです!
私の課題は、根が出ていないこの時期の管理で、日なたに出すと暑さで苗が弱り、室内に置く場合も陽の当たりに気を遣います。
2022年5月8日
5月になりました。
弱弱しかったキャベツの苗ですが、少しずつ大きくなってきました。
もう少しポットで大きくなるまで育てたほうが良いかなと悩みましたが、ポットの土が少ないので、畑に定植することにしました。
木嶋先生によりますと、キャベツは集団で育つのを好む野菜なのだそうです。
空いているウネが少ないということもあり、株間を30cm程度と狭くして、定植しました。
新聞紙のポットごと、植え付けます。
2022年7月20日
更新をすっかり失念しておりました。
胚軸切断挿し木法で植え付けたキャベツです。
夏は害虫被害に遭いやすいので、ネットを覆って育てております。
胚軸を切っていますので、生長はゆっくりですが、真面目に大きくなっているという印象で、7月に入り結球してきました。
わが家は、キャベツは毎年 秋から育てておりましたので、今回は、夏の貴重な収穫になりそうです。
胚軸をカットした直後
収穫したキャベツ
7月末に、胚軸切断挿し木法で育てたキャベツを収穫いたしました。
防虫ネットを覆って育てておりましたので、著しい害虫被害はなかったものの、株元にナメクジがたくさん付いておりましたので、半日ほど丸ごと水の中に浸けて、虫を外に出しました。
暑い時期の栽培は初めてでしたが、病気になることなく、無事に収穫することができ嬉しく思っております。
ウリ科
2022年4月19日
今年のキュウリ栽培は、種まきからの挑戦です。
本葉が0.5枚に展開しましたので、胚軸を切断しました。
いろいろな野菜の胚軸切断を行っておりますが、私の経験上、キュウリの苗が最もしおれる印象ですので、木嶋先生の教えを破り(笑)、24時間浸水させてみました。
苗を長い時間 浸ければ浸けるだけ良いかは、未知です。
今年は、キュウリのコンパニオンプランツのネギを一緒に植えてみます。
ここでも木嶋先生の教えを破っております(笑)。
※ 木嶋先生が紹介されている植え方は、キュウリ苗を畑に定植する際、ネギとキュウリの根っこを絡ませて植え付けるのが本来の方法です。
水で湿らせた土をポットに詰めて、キュウリの苗を挿し込みます。
これで、本葉が4~5枚出てくるまで待ちます。
当日、すっかり萎れてしまった苗もありました。
2022年5月8日
5月になり、胚軸を切断したキュウリの苗がここまで大きくなったので、畑に定植しました。
もう少し大きな苗に育てて植えつけたほうが良いとも思ったのですが、新聞紙で作ったポットが小さすぎて土が少ないためなのか、なかなか大きくなりません。
また、4月5月と晴天が少ないためなのか、元気がないように思います。
うまく育ってくれるか心配ですが、その後の様子は改めてお伝えいたします。
左が胚軸切断挿し木法、右が普通栽培です。
胚軸をカットした苗は、生長が遅くなりますので、普通に育てている苗より小ぶりです。
苗の定植から2週間経ちました。
胚軸切断挿し木法の苗は相変わらず小ぶりで、モザイク病らしき斑点も現れましたが、今のところ順調に育っています。
更に2週間経ちました。
普通植えのキュウリは、いよいよ収穫が始まりました。
胚軸切断挿し木法の苗にも小さな実が付きました。
どちらも苗を植え付けた当初は、葉に病斑が現れましたが、ご覧のように元気に育っています。
—以下は、2021年、2020年のレポートになります—
2021年 胚軸切断挿し木法レポート
トマト(ナス科)
今年1回目の挑戦です。
トマトの本葉が2枚になりましたので胚軸をカットします。
※ 本葉が2枚になった芽を順次カットしてゆく予定です。
胚軸をカットして水に浸けます。
2~3時間 水の中に入れて置くところ、タイミングを逃し 5時間くらい浸けてしまいました。
水を湿らせたポットに穴を開け、トマトの芽を差し込みます。
穴を開けず、直接 芽を挿しこみますと 折れてしまうことがありますので気を付けて。
土と茎をしっかり密着させます。
ポットの内側が異様に汚れているのは、土を湿らせる際、水の勢いが強すぎて土が飛び散ってしまったためです。
蓋がパカっと開くプラスチックの箱に入れて管理します。
箱の内側が汗をかいたら 蓋を開けて調整しています。
苗が多い場合は、蓋付きの衣装ケースがあると便利かもしれませんね。
挿し木から3日経過しましたが、今のところ しおれていません。 この時点で昨年よりステップアップした気持ちになっております。
このままガンバッテ活着してほしいです。
1回目の挑戦から2週間経ちました。
上の写真はすべて胚軸切断挿し木をしたもので、トマトの芽の本葉が2枚なったタイミングに行いました。
右下の1ポットだけ根が活着せず息絶えましたが、今のところ成功率89%です。
さらに1か月経ち、株が大きくなってきました。
失敗は今のところ2株で順調に大きくなっています。
🍅 根をカットして水に浸ける時間を5時間以上行ったこと
🍅 浸水させた苗を土に挿した後、ただちに蓋付きプラスチックの容器に入れて保温したこと
この2点がうまくいったポイントのように思います。
第一花が咲きましたので、植え付けました。
いささか徒長ぎみですが、枯れることなく よく育ってくれたと思っております(涙)。
新月の午前中に、木嶋先生が紹介されているブクブク植えを行いました。
苗の植え付けは、新月の5日前(新月を含みます)から行いますと、良く根付くそうです。
木嶋先生のブクブク植えにつきましては、こちらを参考になさってください。
[詳細]
野菜苗の植え付けの裏ワザ!水やりしないで元気に育てる「ブクブク植え」をご紹介します
7月も終わりに近づいています。
種をまき、胚軸を切断して育ててきたトマト。ずいぶん生長しました。
購入した苗より痩せ気味ですが、実が付き始めました。
4月に苗を購入して育てているトマトたちは、そろそろ終わりになりますので、胚軸切断をしたトマトたちにバトンタッチです。
キュウリ(ウリ科)
2020年は、良いことがなかったキュウリの胚軸切断ですが、今年はうまくいってほしいと思っています。
木嶋先生によりますと、ウリ科は集団で種をまかれることを嫌がるそうですので、1ポットに2粒ずつ種をまきました。
梅雨の最中に種をまきました。
日照不足のせいでしょうか、ものすごく徒長しています。
本葉が0.5枚になりましたので、胚軸をカットします。
間のびしていた胚軸を短めにカットしました。
水に5時間以上浸けました。
ポリポットに育苗用の土を入れ、水をたっぷり注いで土を湿らせて、キュウリの苗を挿し入れました。
上の写真は、挿し芽をして2日後のものですが、十分に水に浸していたと思っていたにもかかわらず、双葉がヨレヨレしてしなびています。
ずぼらな当方も、この時期ばかりは、土が乾燥しないよう気を付けていました。
昨年もそうでしたが、ウリ科はここが正念場かもしれません。
挿し芽から22日経ちました。
1つも枯らすことなく、本葉5枚まで生長しました。
育苗用の土を使用しておりましたが、栄養不足でしょうか、葉の色が薄い緑です。
また、本葉はハモグリバエに食害されてしまいましたが、こちらの苗を畑に植え付けようと思います。
—–
8月になりました。
胚軸切断をし、過保護ぎみに育てていたキュウリの苗が過酷な状況下におります。
どちらも同じウネに定植したキュウリの苗ですが、ウリハムシによる甚大な被害を受けており、あんどん囲いをするべきだったと後悔しております・・・。
しかし、なぜか1株だけあまり被害がないものがあります。
健康な株だから(丈夫な株)でしょうか?
あるいは、被害の少ない株は、トマトのそばに植えているからでしょうか?
農学博士の木嶋利男先生の著書に、トマトの葉には「トマチン」という毒素があり、害虫を寄せ付けない効果があるとの記述があります。
この違いは何なのか、なぞは深まるばかりです。
9月になりました。
今年は秋の訪れが早いように思います。
ウリハムシによるダメージを受けましたが、何とか生き残った苗が大きくなり、花が咲いて実も付き始めました。
初採りです。
若干傷みがありますが、真っすぐなキュウリになりました。
夏場は、1日に5本以上も収穫する日が続いたため、いささか食べ飽きていたキュウリですが、いったん収穫が終わり、9月にふたたび食べられるようになるのは嬉しいですね。
しかも種から育てたものとなりますと、喜びと感動はひとしおです。
カリフラワーとブロッコリー(アブラナ科)
7月24日
7月の満月に、カリフラワーとブロッコリーの種をまきました。
8月13日
虫が付くのを避けるため、日当たりの良い室内にて栽培していたため、徒長しています。
アブラナ科野菜は、本葉1.5~3枚のタイミングで胚軸をカットしました。
水に5時間以上浸けて、挿し木をしました。
カリフラワーとブロッコリーの苗は、見分けがつかないほどよく似ています。
挿し木をした直後は 萎れてしまいますので心配になりますが、木嶋先生によりますと、挿し木をした後は多湿にせず、やや萎れる程度に管理するとよいそうです。
挿し木をして5~7日後に発根します。
8月31日
胚軸切断を行ってから10日経ちました。
上の画像左は、ポリポットに種をまいて胚軸切断を行っていない苗、右は胚軸切断を行った苗です。
胚軸切断を行った最初こそ、生長が遅かったですが、ぐんぐん大きくなってきました。
9月7日
9月7日の新月に、ブロッコリーとカリフラワーの苗を定植しました。
新月に苗を定植すると、根がよく活着すると聞いたことがあるため実践しております。
アブラナ科の若い苗は茎がやわらかくてクネクネしてしまいますので、双葉ごと土に埋めるようにしてみました。
9月23日
植え付けから2週間経ちました。
株の一部が、ヨトウムシらしき害虫にだめにされてしまいました。
残った株は、おんぶバッタに葉を食べられながらも少しずつ大きくなってきています。
11月
11月になり、防虫ネットを取り外しました。
バッタの姿が見えなくなってきたのと、草丈が高くなりネットが邪魔になってきたためです。
ようやく虫たちの食害から解放され、ホッとしております。
左が胚軸切断をしていないカリフラワー、右が胚軸切断を行ったカリフラワーです。
右の株のほうが生長が良いようですが、胚軸切断を行ったからでしょうか。
すべての株を1本1本比較していないため、胚軸切断を行ったほうが生育が良いという結論付けはできませんが、胚軸をカットすると立派に育つことが分かりました。
胚軸切断を行ったカリフラワーに花蕾が付きました♡
種から育てて、ここまで大きくなってくれたことに感動しております。
—– 以下は 2020年のレポートです —–
2020年 胚軸切断挿し木法レポート
1日目
挿し木した当日です。
風が強く苗が土から出ないように 夕方 室内に入れました。
2日目
胚軸をカットした翌日です。根っこが出ていないため生長が止まり、特にキュウリの葉がしおれました。
果たして発根してくれるのでしょうか。心配です。
6日目
接ぎ木から1週間経ちました。
2日目から嫌な予感があったのですが、案の定、見事にすべて枯れてしまいました(涙)。左下のシシトウがかろうじて生きているようですが、どうでしょうか。
ポットの土は十分湿っていましたが、気温が高かったせいでしょうか、残念です。
11日目
枯れてしまったポットを片付けることもせず放置していたところ、キュウリの苗が1つだけ再生しました。驚きです。
まだとても小さい苗ですが、ウネに植え付けました。
ほかの野菜はもう完全にご臨終のようです。一応まだそのままにしていますけれども、再生は難しそうです。
今年初めてキュウリ、ナス、トマトなどの種まきに挑戦してみたのですが、キュウリの発芽率が最もよく、続いてトマト、ナス、シシトウの順でした。
約2か月後
ダメもとで植えたキュウリの苗です。
ぐんぐん伸びて50cmほどになり、花も咲き始め、6~7本収穫することが出来ました。
長梅雨だったにもかかわらず、がんばって育ってくれたと思います。
まとめ
農学博士の木嶋利男先生が紹介されている胚軸切断挿し木法についてご案内いたしました。
わが家は、今年2回目の挑戦ですが、無事に定植するに至りました。
種からまいた野菜は、接ぎ木苗より弱々しく育ちますので大きく生長するか不安がともないますが、幼い芽の胚軸をカットすることにより微生物が定着し、病気の抵抗力が高まると言われています。
胚軸切断挿し木法は、私のような家庭菜園の初心者にはハードルが高い方法と思っておりましたが、
・切断した苗を長時間水に浸け(わが家は5時間以上浸けています)
・ポットに挿し芽をした直後から保温管理(夏場はのぞく)
この2点が失敗しない方法かどうかは分かりかねますが、参考にしていただきましたら幸いです。
[参考文献]