農学博士の木嶋利男先生が紹介されている、大根(ダイコン)の栽培のポイントとコツについてご案内いたします。
大根は、野菜づくり初心者の方でもお手軽に育てることが出来ます。
今回は、大根栽培の基本である「土づくり」「種のまき方」、「大根の原産地と歴史」についてご紹介いたします。
原産地の様子が分かりますと、大根がどのような環境を好んで生長するかをおわかりいただけると思いますので、参考になさってください。
※ 画像はすべてイメージです
大根の原産地、日本への伝来
大根の原産地
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大根の先祖は、地中海から中近東あたりに自生するアブラナ科の植物で、シルクロードを渡って東に移動し、現在の中国東北部でダイコンが出来上がったと言われています。
大根の原種は、天山山脈の東山麓あたりに自生しており、カラカラに乾いた痩せた地に葉を広げて養水分を探しながら、夜露を葉に受けて生きています。
そして、春先に花が咲き、初夏に種が地面に落ちて、雨が降ると好機を逃さず発芽します。
※原種は、伝統品種の小瀬菜大根に似ていたそうです
原種の大根は、宮城県の小瀬菜ダイコンのような姿で、根は太らず側根が多いものでした。
現在、私たちが食している1本根の大根は育成された品種です。
日本への伝来
大根が日本に伝わったのは、弥生時代と言われています。
今では多くの伝統品種が生まれ、1980年の全国調査では110種が確認されています。
現在流通している大根の90%以上は「青首系品種」で、愛知県の伝統品種である宮重大根から生まれたものです。
有名な大根の例
名称 | 特徴 | 主な産地 |
守口大根 | 世界一長い大根 | 愛知県、 岐阜県 |
桜島大根 | 世界一大きい大根 | 鹿児島県 |
練馬大根 | 水分が少なく歯ごたえがよい | 東京都 |
聖護院大根 | 丸形の大型大根 | 京都府 |
ねずみ大根 | 辛味があり蕎麦に合う | 長野県 |
初心者にこそおすすめしたい!大根(ダイコン)栽培のポイントとコツ
肥料が要らない土づくり
大根の原種は、気候が冷涼で乾燥した石ころだらけの痩せた土地に自生しており、霧や夜露を得て、水分を葉から吸収して育ちます。
つまり、私たちが大根を育てる際も、原産地に似たような環境づくりをしますと、生育がよくなり、味の良いものを収穫することが出来ます。
土質別に畝を立てる
水はけの悪い粘土質の畑の場合は、畝の高さを15~20cmにします。
砂質、中間的な土壌の場合は、畝の高さを10cm程度にします。
東側の畝がおすすめ
大根を栽培する場合、朝日がよく当たる東側の畝がおすすめです。
西日が強く当たる畝は夕方に乾燥しますが、東側の場合は夕方から夜露が発生しやすくなり、大根の葉がその水分を吸収して美味しくなります。
枝根・又根にならないコツ
大根は、有機物が多い肥沃な畑では うまく育たない場合があります。
大根は有機物の塊を見つけますと、すぐに食べようとして側根が太って枝根になります。
原産地の様子からして、大根は低い栄養の土壌でよく育ちますので、堆肥や肥料を入れずに畝を準備します。
石ころで又根になる?
木嶋先生によりますと、大根は土の中に石ころなどの異物があっても又根になる可能性は低いとのことです。
異物をよけて少し曲がる程度で、1本根の姿に育ちます。
大根の種まき「点まき」にする理由
大根は、一ヶ所に5粒ほど点まきするのがおすすめです。
花が咲き終わった大根はサヤができ、中に5粒ほど種が入ります。
大根はサヤが弾けて種が飛散するタイプではなく、サヤのまま地面に落ちて複数の芽が同じ場所から出るのが特徴です。
つまり、私たちが行う種まきも自然にならって一ヶ所に5粒ほどの点まきをしますと発芽がよく揃い、競い合うように育ちます。
大根の種のまき方
種のまき方は、指で約2cmの深さの穴をあけ、1穴に5粒の種をまとめて入れ、土をかぶせて鎮圧します。
雨上がりで土が湿っている場合は、鎮圧する必要はなく、土をかぶせるだけでも十分で、簡単に発芽します。
美味しい大根を栽培するコツ
大根の葉には、細かい毛が生えています。
これは、葉に夜露を受けて水分を吸収するための仕組みで、乾燥地生まれの野菜の特徴なのだそうです。
なお、人参やキャベツのようなツルっとした葉の野菜は、葉から夜露は吸いせん。
夜露が発生するのは、夕方から明け方にかけてです。
日が落ちて気温が下がりますと、空気中の湿気が結露して大根の葉に水滴が付きますので、大根は葉から水分を吸収して元気に育ちます。
夜露をたっぷり与えるには、朝日がよく当たる東側の畝で栽培してみましょう。
まとめ
農学博士の木嶋利男先生が紹介されている、大根(ダイコン)の栽培方法をご案内いたしました。
木嶋先生は、原産地に似たような環境で大根を栽培すると、のびのび育って美味しくなると述べられています。
初心者の方でもお手軽に育てることが出来ますので、参考になさってください。
[参考文献]木嶋利男著「野菜の性格 アイデア栽培」 P122~P125