ドキュメンタリー映画、「人生フルーツ」を鑑賞してまいりました。
この映画は、愛知県春日井市の高蔵寺(こうぞうじ)ニュータウンの一隅の雑木林に囲まれた平屋の丸太小屋で暮らす、津端英子さん、修一さんご夫妻の日常生活を撮影したものです。
津端さんご夫妻は一般のお方ですが、お二人の芯のある美しい生き方が反響を呼び、本が出版されたり、映画作品になりました。
本日は、映画「人生フルーツ」について、ご案内いたします。
出典 映画「人生フルーツ」公式サイトより
ドキュメンタリー映画「人生フルーツ」について
ナレーションは、樹木希林さん
この映画の語りは、樹木希林さんです。
希林さんの深く重みのある声で、つばた夫妻ワールドに引き込まれてゆきます。
風が吹けば、枯葉が落ちる。
枯葉が落ちれば、土が肥える。
土が肥えれば、果実が実る。
こつこつ、ゆっくり。
人生、フルーツ
映画製作者
プロデューサー 阿武野勝彦
音楽 村井秀清
音楽プロデューサー 岡田こずえ
撮影 村田敦崇
音楽効果 久保田吉根
編集 奥田 繁
監督 伏原健之
津端英子さん、修一さんプロフィール
英子さん
1928年1月18日生まれ。O型。
愛知県半田の老舗の造り酒屋の娘として生まれます。身の回りのお世話はすべて「ねえや」がやってくたという、正真正銘「深窓の令嬢」でした。
身体が弱かった英子さんは、母親の手料理だけを食べて育ちます。土、野菜作りに興味を持ち始めたのも幼少期から。下働きの職人さんに頼んで、鶏小屋や菜園をつくってもらい、学校よりも土を愛する少女でした。
27歳で修一さんと結婚。相談もなく何でも一人で決めてしまう修一さんの奔放な生活ぶりに不平不満を言う事もなく、けんか一つせず仲良く暮らしています。
平屋の丸太小屋の周りで、果物、野菜をたった二人で栽培し、口に入れるほとんどが英子さんの手作り。娘さんや大切な人に贈るという生活を送られています。
修一さん
1925年1月3日生まれ。B型。
海軍を自ら志願。敗戦後、東京大学第一工学部を卒業。建築設計事務所を経て、日本住宅公団に勤務。つばた家のある高蔵寺ニュータウンをはじめ、阿佐ヶ谷ニュータウンなど宅地造成を担当しました。
日本住宅公団を退職後は、広島大学教授など歴任。退任後は自由時間評論家として90歳になった今でも現役で活躍されています。
過酷な農作業も楽しく。ふたりの素敵な暮らし
つばた夫妻は、80種類の野菜、50種類の果実をたったお二人で栽培しています。
畑仕事をなさったことがある方はご存知と思いますが、農作業は決して楽なものではありません。
かたい土をクワで耕す作業、土の中に混ざった石ころや根っこを取り除く作業、種をまく作業、それはもう一つ一つが重労働です。
わたしも小さな菜園で野菜を栽培しておりますが、本気でないと野菜づくりは あっという間に「いやに」なります(笑)。
しかしながら、いやになる以上の感動があることを、お二人の姿を見て学ぶことが出来ます。
野菜や果実で手作り料理
英子さんと修一さんは常に一緒にいるかというと、そうでもないようです。
丸太小屋でそれぞれがやりたいことを行い、お茶と食事の時間にポツリポツリと話をする程度です。
それでも、梅やサクランボ、栗などはお二人で収穫して、木を剪定したり、ジャムを作ります。
ところで、たくさん実が付いた果物や野菜のほとんどは、英子さんは「人のため」に送ってしまっているようです。
年金暮らしでお金なんてないのよとケロっと話している英子さん。
お二人の暮らしが豊かに見えるのは、日々の暮らしを楽しんでおられるからかもしれません。
修一さんの公団時代
修一さんが手がけた高蔵寺ニュータウンの造成プロジェクトは、人と自然が一体になるものでした。
しかしながら、敗戦後の高度成長期、そのプロジェクトは修一さんの理想とする街づくりと逆行したものとなりました。
高蔵寺ニュータウンは、修一さんのマスタープランと異なるものになりましたが、お二人はこの土地の300坪を購入して、平屋の丸太小屋を建て、この地を見届けようと決めたのです。
出来ることは自分で
「自分で出来ることは自分で行う」という信条の修一さんは、障子貼りも英子さんと行います。
障子を外に出して、雨にさらして和紙をはがしやすくしている知恵、英子さんが使う畑用の工具、看板、ポスト、台車、すべて修一さんの手作りです。
それは決してケチな生活とは程遠い、豊かな暮らしに映ります。
思いやりを持って生きる
お二人を見ていると、たいそうな誉め言葉をかけなくても互いを思いやる気持ちを持っていることがわかります。
感謝の気持ちと、思いやり。
大切な人に甘え過ぎて、一番欠けてしまいがちなこと。
依存しすぎず、干渉せず。
お金よりも、人。
つばた夫妻が教えてくれます。
まとめ
佐賀県伊万里市の精神病院の設計を無償で手掛けた修一さん。
病院の関係者の言葉がとても印象的でした。
「(修一さんは)自分がすべきことは、すぐ動ける。常にそういう体制にいらした。でも周りが津端さんに求めていなかっただけ。」
わたしは、お二人の暮らしが「本物」ではないかと思わずにはいられません。
土があれば何とか生きてゆくことが出来る。その思いで土を耕してきたつばた夫妻。
心に沁みる、たいへん素晴らしい映画です。
風が吹けば、枯葉が落ちる。
枯葉が落ちれば、土が肥える。
土が肥えれば、果実が実る。
こつこつ、ゆっくり。
人生、フルーツ
人生フルーツの公式サイトです。現在各地で上映中ですので、ご覧になってくださいね。