40年以上、アイビーファッションで暮らしていると、伝統的なアイテムというものは、不変であることが分かってくる。
本日は、私が愛用しているヘビーデューティー「ショットのスエードランチコート」をご紹介する。
底冷えする冬に、大変 重宝しているのでオススメしたいコートである。
※ 本ページは個人の見解によるものです
アイビーの必須アイテム「ランチコート」
私は別の記事で、ヘビーデューティーについて個人的な見解を言及しているが、このランチコートも「ヘビーデューティー」である。
アイビーファッションのアウターコートは、ランチコートとダッフルコートが同時に入ってきた。
「機能本位」という観点から、日本に上陸したのだ。
アイビー全盛期のランチコートは、VANと、KENTというVANの兄弟メーカーが主流であった。
ランチコートの「ランチ」とは牧場のことで、もともと家畜の番をする子供や大人が着用していた作業着であったらしい。
なお、牧童たちがジーンズの上にはおっているタイプは、ショートレングスのコートである。
今から40年前、アメリカ製ランチコート(シェアリングコート)は、円安の影響もあり、10万円以上もする恐ろしく高額なものであったため、私には到底 手の届かないものであった。
それ故、日本製のVANのコットンスエードのコートを大事に着用していた。
機能的なランチコート
ランチコートは、アメリカ西部のワイルドさが漂うヘビーデューティーで、作業がしやすく、機能本位に出来上がったダイナミックなコートである。
シープ・スキン
最近では、カウ・スキン(牛の皮)のものも製造されているが、本来の表地は、シープ・スキン(羊の皮)が使用されている。
そして、羊の皮が使われているものを「シェアリング・コート」と呼ぶ。
ランチコートは一枚皮で、毛が付いているほうを内側にして仕立てる製法になっている。
ちなみに、私のショットは、カウ・スキンである。
申し分のない防寒と強度
皮で製作されたランチコートは、たいへん温かい。
そして、保温力にすぐれ、また強度も高く頑丈だ。
街で着るだけでは勿体ないくらいのコートである。
大きな上衿(うわえり)
大きな上衿は、マフラーがなくても温かい。
裏側からつづく、パイルがかぶっているためだ。
パイルとは、織物の片面か両面に、輪奈(わな)や毛羽を織り込んだ織物のことをいう。
セミ・ラグラン・スリープ
昔のランチコートの袖は、肩の途中から脇の下に向かって切り替えラインが入っている。
一見、ラグランスリーブ(肩の付け根から袖が縫い付けられているタイプ)に見えるのが特徴だ。
残念ながら、私の袖は、セミ・ラグラン・スリープではない。
参考までに、セミ・ラグラン・スリープについて言及しておこう。
セミ・ラグラン・スリープは、肩を動かしやすく、作業効率が大変よい仕立てである。
ラグランという名は、実在したイギリス軍の男爵からきている。
ワーテルローの戦い(1815年)に右腕を切断したラグラン男爵は、クリミア戦争で負傷兵が脱ぎ着しやすい上着を考案したのが由来とされている。
片腕を失った自分の経験を活かして編み出された歴史ある袖なのだ。
大きなポケット
道具を入れやすい大きなポケットは、現在のタイプも継承されている。
コートの裏地にも、大きめの内ポケットが2つ付いているので、私は文庫本を持ち歩いている。
打抜きボタン
前(フロント)を留めて、ボタンが見えるタイプを、「打抜きボタン」という。
片手でボタンをはずすことができる、機能的なつくりだ。
ショットのランチコートの着こなし
ランチコートは、もともと牧場の作業着である。
また、スペクテイター用(18世紀頃に活躍したイギリスの競走馬)であったゆえに、スポーティーな着こなしをオススメしたい。
このコートは大きく厚みがあるので、中に着るものや靴も、ボリュームを出したほうが良いだろう。
そうなると、下は「リーバイス」などジーンズ、中に着るものは薄手のタートルネックセーター、靴はダナーやレッドウイングなどのショートブーツと組み合わせると完璧だ。
ショットのランチコートの手入れ
皮製品はクリーニングに出すとバカ高くなる。
下手をしたら、中古のランチコートを1着 買えてしまうかもしれないくらいだ。
したがって、私はランチコートを一度も洗濯していない。
手入れ法は、35年ほど前に購入した ケントブラシでブラッシングしているだけである。
ちなみにケントブラシは、英国の老舗ブラシメーカーで、VANの兄弟会社であったKENTとは別会社である。
ブラシは、目に見えないホコリを落としてくれる役割があるので、何もしないままにしておくより、もちが全然違ってくる。
ブラッシング効果が、あなどれないことを覚えていてほしい。
まとめ:カジトラのうんちく
私がファッションについてしたためている背景に、当ブログを見つけて訪れてきてくれた君に、「良いアイテムを長い年月 着てほしい」という願いがある。
古いものが良いということではなく、現代まで存在価値が継続しているので良いものなのだと、申し上げたい。
私のファッションの師でもある、くろすとしゆき氏は、こう語っている。
人は「好き」「嫌い」と、「良い」「悪い」をよく混同する。
人間というものは 好みがあるので、好きなファッション・苦手なファッションを、自分の都合と感覚に基づく。
私が記事にしているアイテムは、好き嫌いという土俵ではなく、何十年と紆余曲折しても存在している「良いアイテム」、すなわちヘビーデューティーである。
今回ご紹介した「ショットのスエードランチコート」もヘビーデューティーである。
10年、20年と愛着を持ち、大事に身に付けていこうという気持ちで、君のワードローブに「良いもの」を増やしていってほしい。
※ 本ページは個人の見解です
[参考アイテム]
・ショットカウスプリット ランチャージャケット(Schott Made in USA)
[参考ショップ]
株式会社ウォーク 奈良県橿原市久米町567-2
ショップサイト WALK
関連記事