農学博士の木嶋利男先生が紹介されている、甘いトマトを育てる方法をご案内いたします。
高糖度のトマトを栽培するには、雨水を防ぐために防水シートを覆ったり、潅水を減らす方法などがありますが、天候に左右される家庭菜園では管理がなかなか難しいですね。
今回ご紹介する方法は、畑のウネを踏み固めてトマトを栽培する「カチカチ植え」で、雨水をしみ込みにくくして育てます。
この栽培は、トマトの原産地や特性を活かした方法ですので、参考になさってください。
甘いトマトを育てる方法「カチカチ植え」畑を踏み固めて雨水防止
トマトの原産地
トマトの原産地は 南米アンデスの高地で 雨が少ない痩せた乾燥地帯です。
原種のトマトは、岩がゴロゴロしたガレ場を這うように枝を伸ばして育ち、葉や枝に生えた細かい毛で夜露をキャッチして水分を得て生きています。
私たちが育てるトマトも、原産地の環境のように栽培しますと、高濃度の果実の収穫が期待できます。
甘くないトマトが出来る環境
トマトは、雨などによって土が極端に湿ったり、反対に乾きすぎたりを繰り返しますと、果皮が厚くなり糖度が高くなりません。
そこで 農学博士の木嶋利男先生は、畑の表面を鎮圧してカチカチに固め 原産地に似た環境に近づけ、雨水を浸み込みにくくする「カチカチ植え」を紹介されています。
高糖度のトマトが出来るカチカチ植え
表面を踏み固めて鎮圧した土にトマトを育てますと、根は深くまで伸びてゆきますので、生育が安定し、高糖度の果実を収穫することが出来るのだそうです。
踏み固めた土の状態
表面を踏んで固くなった土で、トマトはちゃんと育つのかと疑問に思われるかもしれませんが、大丈夫です。
木嶋先生によりますと、団粒構造がつくられた土壌であれば、表面が固められたとしても、5~10cm以下の下層の土は、やわらかく程よく湿った状態が維持され、深いところまで根を伸ばし、よく育つのだそうです。
普通栽培との相違点
カチカチ植えと、普通の栽培の大きく異なる点は、「土づくり」です。
カチカチ植えは、ウネの表面を踏んで固めるため、栽培の途中で水分や養分を与えることが出来ませんので、苗を植え付ける前に施す肥料(元肥)を通常の2倍ちかく、施します。
カチカチ植え | 普通栽培 |
根は浅いところには伸びず、地中深くに伸びます。土がかたいのは深さ5~10cmくらいまでで、その下はやわらかく水分量も一定で、トマトの生育が安定します。 | 根は横にも広がります。 土は全体的にやわらかく、雨が降ると水が浸みこんで地中の水分量が増え、乾燥すると地中の水分量が減り、トマトの生育が安定しません。 |
甘いトマトを育てる「カチカチ植え」の方法
元肥の準備
・完熟たい肥 通常の2倍(1㎡あたり2~3kg)
・有機質肥料 通常の1.5倍(1㎡あたり300~400g)
土づくり
1.上記のたい肥を深くよく耕します。
2.水をたっぷり施し、ウネを湿らせます。
3.麦踏みローターや足などを使って鎮圧します。
4.2と3を2~3回繰り返します。
トマト苗の準備
トマトの苗は、普通栽培と同じものを用意します。
苗の植え付けは、晴天の午前中が適しています。
早朝、水を張ったバケツに苗をポットごと入れて浸け、水から出して日陰に2~3時間放置し、十分に吸水させます。
トマト苗の植え付け
踏み固めたウネは固くなっていますので、移植ごてなどを使って、ポットよりやや大きい直径10~15cm、深さ15cm、株間60cm程度の植え穴を掘ります。
そして、ポットから苗を取り出し、根鉢が崩れないように植え付けます。
十分に水を浸みこませていますので、苗を植え付けた後の水やりは行いません。
まとめ
農学博士の木嶋利男先生が紹介されている、甘いトマトを育てる方法「カチカチ植え」について、ご案内いたしました。
この栽培は、トマトの原産地であるアンデス地方の厳しい環境に近づける方法で、ウネをカチカチに固めて雨水を防ぎ、トマトの根を地中深くに伸ばすことで、生育が安定して糖度が上がることが期待できますので、参考になさってください。
[参考文献]
木嶋利男著「野菜の性格アイデア栽培」
木嶋利男著「野菜の植えつけと種まきの裏ワザ」