農学博士の木嶋利男先生が紹介されている、スイカのコンパニオンプランツをご案内いたします。
スイカを単体で育てるより、コンパニオンプランツと混植しますと、スイカがよく育ち美味しくなると言われています。
今回は、病気予防に効果的なコンパニオンプランツ、コンパニオンプランツ栽培のポイントについてご紹介いたしますので、参考になさってください。
スイカのコンパニオンプランツ「長ネギ」
※ スイカと長ネギ
病気予防に効果的な「ネギ」
スイカはキュウリなどのウリ科野菜がかかる「つる割れ病」になることがあります。
この病気にかかってしまいますと、つるが水分や養分を運べなくなり、葉がしおれて枯れ、死んでしまうことがあります。
農学博士の木嶋利男先生は、長ネギは 根に共生する細菌が出す抗生物質により病原菌が死滅しますので病気になりにくくなると、紹介されています。
作物同士の競合の心配はありません
スイカの根は真っすぐ深く伸びますので、側根はあまり多くありません。
一方で、長ネギは浅根タイプですので 2つの野菜は競合の心配がありません。
スイカが感染する病原菌は 地表に近い浅い場所に生息しますので、ネギの根が出す抗生物質が病気予防に十分役立つのだそうです。
応用がきくコンパニオンプランツ「長ネギ」
長ネギとの混植は、ウリ科のキュウリ、カボチャ、メロン、ウリ、ヘチマ、ゴーヤなどにも応用することが出来ますので、おためしになってみてください。
スイカのコンパニオンプランツ栽培のポイント
スイカの生育の初期に病気に感染させないことが大事です。スイカの根鉢に長ネギの根が触れ合うように(絡めさせて)植え付け、病気の予防効果を高めましょう。
品種選び
スイカ、長ネギともに品種は何でもOKです。
長ネギは、
・購入した苗
・3月上旬~中旬に種まきをして育苗したもの
・前年から育てていたもの
など、いずれのものでもコンパニオンプランツになります。
土づくり(ウネの例:幅90cm、高さ20cm、奥行き120cm)
植え付けの3週間前に、完熟たい肥とぼかし肥などを施して耕し、ウネを立てます。
植え付け
地域によって前後しますが、5月中旬~下旬にスイカと長ネギの苗を同時に植え付けます。
スイカの苗はウネの中央よりも北側に植え、南方向にツルを伸ばせるように広く空けておきましょう。根っこも南側に伸びます。
スイカの株の周囲にビニールであんどん囲いを作り、朝晩の寒さや強い風から守りますと生育がよくなります。
敷きわらがオススメです
ウネの全面に敷きわらで覆っておきますと、土の乾燥や泥水の跳ね返りを防ぐこと出来ます。
ワラは厚く覆わず、土がうっすら見える程度で構いません。
摘心
スイカの親づるは、5~6節で先端を切り(摘心=てきしんと言います)、子づるを3本伸ばします。
大玉スイカの場合、このうち2本に果実を付けさせます。残りの1本は「遊びづる」とすることで、根の水分を吸う力が強くなります。
追肥
スイカの果実がこぶし大になりましたら、株元にぼかし肥や鶏ふんなどを一握り施します。
収穫
品種によって開花から収穫の日数が決まっていますので、それにしたがって収穫します。
採り頃を見分けるコツは、果実を叩いてハリのある音がした時です。
スイカのコンパニオンプランツ「トウモロコシ」
木嶋先生は、スイカとトウモロコシも相性が良い組み合わせですとおすすめされています。
スイカとトウモロコシは収穫の時期が近く、ほぼ同じタイミングで畝を片付けることが出来ますので、次の野菜の作付けに移りやすいメリットもあります。
空間を利用して有効に栽培
スイカはツルを横に伸ばして生長しますので、広い面積が必要です。
一方でトウモロコシは風媒花(=花粉媒介を風に頼る形の花)のため、株の数を多めにして受粉しやすくします。
横に伸びるスイカと、縦に伸びるトウモロコシを組み合わせることによって、同じウネで空間を有効に利用することが出来ます。
マルチになるスイカ
トウモロコシは暑さや乾燥に強く、日光を好む野菜です。
一方でスイカは多少の日陰でもよく育ち、トウモロコシの根元を覆うように広がりますので、保湿や雑草の予防など、マルチとしての役割を果たします。
どちらも良く育ちます
木嶋先生によりますと、トウモロコシはアンモニア態窒素、スイカは硝酸態窒素を好んで吸収します。
まずトウモロコシがアンモニア態窒素を利用して、アンモニア態窒素が分解してできる硝酸態窒素は適度に抑えられるため、スイカの「つるぼけ」が起こりません。
つまり、適度にトウモロコシが養分を吸収しますので、肥料過多によるスイカのつるぼけが起こらなくなります。
スイカとトウモロコシのコンパニオンプランツ栽培のポイント
品種選び
スイカ、トウモロコシともに品種は何でもOKです。
トウモロコシを種から育苗する場合
トウモロコシを種まきして苗に生長させるまでの期間は約3~4週間かかりますので、植え付けに間に合うように育てましょう。
ポリポットに3粒まき、葉が2~3枚の頃に間引いて1株にし、葉が4枚になるまで育てます。
土づくり(ウネの例:幅80~90cm、高さ10cm)
植え付けの3週間前に完熟たい肥とぼかし肥(または牛ふん・鶏ふんなど)を施して耕し、ウネを立てます。
植え付け
地域によって前後しますが、5月上旬~下旬にトウモロコシとスイカの苗を同時に植え付けます。
※ 南北に長い南北ウネが育てやすいそうです。
トウモロコシ(2条)
条間50cm、株間30cm
スイカ
トウモロコシ3~4株に対し、スイカは1株の割合でウネの中央に植えます。
株間90~100cm
苗を早めに植える場合は、スイカの株にビニールであんどん囲いをして、朝晩の寒さや強風から守りましょう。
摘心
スイカの親づるは、5~6節で先端を切り、子づるを3本伸ばします。
大玉スイカの場合、このうち2本に果実を付けさせます。残りの1本は「遊びづる」とすることで、根の水分を吸う力が強くなります。
追肥
スイカ
スイカの果実がこぶし大になりましたら、株元にぼかし肥(または鶏ふんなど)を一握り施します。
トウモロコシ
肥沃な土でない場合、1~2回ほど追肥します。
トウモロコシの周囲にぼかし肥(または鶏ふん)を1握り施し、軽く土に混ぜ込みます。
収穫
スイカ
品種によって開花から収穫の日数が決まっていますので、それにしたがって収穫します。採り頃を見分けるコツは、果実を叩いてハリのある音がした時です。
トウモロコシ
スイートコーンは、植え付けから60日程度で収穫することが出来ます。
スイカのコンパニオンプランツ「スベリヒユ」
スイカのコンパニオンプラツは驚くべきことに「草」も効果があることをご存知でしょうか。
木嶋先生は、草の「スベリヒユ」を除草せずにスイカと混植させますと、マルチの代わりになるのと同時に、スイカの根っこの働きを助ける効果があると、紹介されています。
なおスベリヒユは、おひたしや和え物でにして頂くことが出来ます。
スイカとスベリヒユの根の特性を活かした草生栽培(コンパニオンプランツ栽培)
スイカの原産地は、熱帯アフリカの砂漠からサバンナ地帯です。
木嶋先生によりますと、スイカは乾燥した気候でまっすぐ下に根を伸ばし、葉の蒸散作用で生まれる強い力でポンプのように地中の深くから水分を吸い上げる性質があります。
スベリヒユは 夏の畑に生える代表的な草ですが、取り除かずにそのまま育てます。
スベリヒユの根もスイカと同様に直根性で、地中深くから水を吸い上げて、同時に土の中の空気や水の通りもよくしますので、スイカの根の働きの助けになります。
その結果、スイカの株はすくすく旺盛に育ち、ツルが伸びて葉が多くなり、光合成がしっかりと行えるようになりますので、甘くてみずみずしい果実を収穫することが出来ます。
スイカ+長ネギ+スベリヒユのトリプル混植もOK
前の章でご紹介しました長ネギとスベリヒユをコンパニオンプランツにしてスイカを栽培することも出来ます。
スベリヒユは暑さや乾燥に強く、地表をおおうように広がりますので、マルチの代わりにすることが出来ます。
なお、スベリヒユをコンパニオンプランツにする栽培は、スイカのほかに チンゲンサイやコマツナなどに応用することも出来ます。
スイカとスベリヒユのコンパニオンプランツ栽培のポイント
品種選び
スイカの品種は何でもOKです。
スベリヒユは路地などに生えているタネを採って撒いてもよいですし、近縁のハナスベリヒユ(ポーチュラカ:写真上)の種を園芸店で購入する方法もあります。
土づくり(ウネの例:幅90cm、高さ20cm、奥行き120cm)
植え付けの3週間前に、完熟たい肥とぼかし肥などを施して耕し、ウネを立てます。
植え付け
地域によって前後しますが、5月中旬~下旬にスイカの苗を植えます。
このとき、長ネギを一緒に植えても構いません。
スイカの株の周囲にビニールであんどん囲いを作り、朝晩の寒さや強い風から守りますと生育がよくなります。
敷きわらでもOK
スベリヒユがあまり生えない場合は、敷きワラがおすすめです。
ワラは土が見える程度に薄めに敷き、出来るだけスベリヒユの発生を促しましょう。
摘心
スイカの親づるは、5~6節で先端を切り、子づるを3本伸ばします。
大玉スイカの場合、このうち2本に果実を付けさせます。残りの1本は「遊びづる」とすることで、根の水分を吸う力が強くなります。
追肥
スイカの果実がこぶし大になりましたら、株元にぼかし肥(または鶏ふんなど)を一握り施します。
収穫
スイカ
品種によって開花から収穫の日数が決まっていますので、それにしたがって収穫します。
採り頃を見分けるコツは、果実を叩いてハリのある音がした時です。
スベリヒユ
おひたしや和え物などで食べることが出来ます。東北地方では干して保存食にする地域もああります。
スイカのコンパニオンプランツ「オオムギ」
スイカの果実を大きくするためには、葉っぱが多く充実しているのがポイントです。
そのためにはツルが伸びる先を次々に敷きわらで覆って保湿し、根を伸びやすくします。
この手間を省くことが出来る(マルチの代わりになる)コンパニオンプラツが「オオムギ」です。
マルチ代わりになるオオムギ
春から初夏にかけてオオムギの種をまきますと、草丈が高くならず、地表を覆うように生えます。
放射状に葉を広げるオオムギは、土を保湿しますのでマルチの代わりになり、他の雑草が生えるのを抑える性質がありますので、スイカの根がよく広がります。
また、オオムギの葉にスイカの巻きひげが絡んで株が安定しますので、ツルがよく伸びて葉の数も増え光合成がよく行えるため、美味しいスイカを収穫することにつながります。
オオムギが病気の身代わりになる効果
オオムギは、自分自身がうどんこ病を発生させます。
しかし同時にうどんこ病菌を食べる「菌寄生菌」も増えますので、スイカのうどんこ病菌を退治してくれる役割を果たしてくれます。
つまりオオムギが、スイカの病気の身代わりになってくれるのです。
スイカとオオムギのコンパニオンプランツ栽培のポイント
品種選び
スイカの品種は何でもOKです。
オオムギは、リビングマルチ用の品種が販売されています。
土づくり(ウネの例:幅80cm、高さ15cm)
植え付けの3週間前に、完熟たい肥とぼかし肥などを施して耕し、ウネを立てます。
スイカ
5月上旬~下旬に、スイカの苗を植え付けましたら、株の周囲にビニールであんどん囲いを作り、寒さや強風から保護します。
オオムギ
ウネの上や通路などにオオムギの種をまきます。
クワやレーキなどで土の表面をならして種を軽く土で覆っておきます。
植え付け例
ウネ幅80cm、ウネの高さ15cm
スイカの株間 90cm
摘心
スイカの親づるは、5~6節で先端を切り(摘心)、子づるを3本伸ばします。
大玉スイカの場合、このうち2本に果実を付けさせます。残りの1本は「遊びづる」とすることで、根の水分を吸う力が強くなります。
追肥
スイカの果実がこぶし大になりましたら、株元にぼかし肥(または鶏ふんなど)を一握り施します。
収穫
スイカ
品種によって開花から収穫の日数が決まっていますので、それにしたがって収穫します。
採り頃を見分けるコツは、果実を叩いてハリのある音がした時です。
オオムギ
オオムギは 真夏の暑さで枯れます。枯れたオオムギを土に鋤き込みますと 緑肥になります。
まとめ
農学博士の木嶋利男先生が紹介されているスイカのコンパニオンプランツと、栽培のポイントについて ご案内いたしました。
スイカと、コンパニオンプランツ特性を活かした栽培ですので参考になさってください。
[参考文献]
木嶋利男著「育ちがよくなる! 病害虫に強くなる! 植え合わせワザ88 決定版 コンパニオンプランツの野菜づくり」
[オオムギの種]