農学博士の木嶋利男先生が紹介されている、「ハクサイとブロッコリーの違いと、栽培のポイント」について、ご案内いたします。
ハクサイとブロッコリーは、いずれもアブラナ科の野菜です。
私は、土づくりや苗の植え方など、同じ育て方をすると思っておりましたが、じつは栽培法が異なることが分かりました。
ハクサイは、周囲の植物を排除して1個体で育つことを好み、ブロッコリーは集団で育つことを好む性質があることから、家庭菜園でもそれぞれが育ちやすい環境をつくってあげますと、生育が促進すると言われていますので、参考になさってください。
※ 画像はイメージです
ハクサイについて
ハクサイの原産地
ハクサイの原産地は、地中海沿岸から中央アジアの乾燥した涼しい高原地帯で、草原に自生している菜の花は、ハクサイの原種といわれています。
原種のハクサイは、シルクロードを通り、現在の中国北部にたどり着きました。そして、華北のカブと華南のパクチョイが交雑されて、今の結球するかたちになりました。
そういう意味では、中国北部がハクサイの原産地ということもできます。
ハクサイの種類
※ 画像は山東菜です
ハクサイは、山東系・北方系・南方系があり、日本でおもに栽培されているものは山東系です。
ハクサイの日本伝来
日本で結球したハクサイが食べられるようになったのは、20世紀に入ってからのことですので、まだ新しい野菜とも言えます。
ハクサイは各地の採種場から「仙台白菜」「愛知白菜」「石川白菜」として、世に出てゆきました。
ブロッコリーについて
ブロッコリーの原産地
ブロッコリーの原産地は涼しい気候の地中海沿岸で、中世の頃にヨーロッパに渡り定着しました。
ブロッコリーの原種は、厳しい環境で育っており、切り立った岸壁に張り付くように生えている菜の花の仲間です。
ブロッコリーの日本伝来
ブロッコリーが日本に入ってきたのは明治時代で、家庭に普及したのは昭和40~50年代ですので、まだ新しい野菜に入ると言えるでしょう。
菜花やかき菜と異なり、ブロッコリーは主茎の花蕾(からい=つぼみの意)が大きくなるのが特徴で、昨今はわき芽がたくさん伸びる茎ブロッコリーという品種も馴染み深くなりました。
ハクサイとブロッコリーの違い
ハクサイとブロッコリーは同じアブラナ科の野菜で、いずれも冷涼な厳しい環境で育つことは共通していますが、大きく異なる点は「育ち方」です。
ハクサイは、痩せた土地の厳しい環境で子孫を残すために、周囲の植物を排除して自分だけ大きくなろうという性質がある「排除型」です。
一方、ブロッコリーは、切り立った岸壁に張り付くように生えており、1個体では岩を溶かして栄養分を得ることが難しいことから、集団になって育つことを好む「共栄型」です。
ハクサイとブロッコリーの育て方と栽培のポイント
ハクサイとブロッコリーの栽培ポイント
ハクサイは、周りの植物を排除し 1個体で育つことを好み、ブロッコリーは集団で育つことを好む性質があることから、家庭菜園でもそれぞれが好む環境づくりをしてあげますと、生育が促進すると言われています。
ハクサイの育て方
土づくりについて
ハクサイの原産地は痩せた草原ですが、畑でハクサイを育てる場合は、元肥を十分に施す必要があります。
農学博士の木嶋利男先生によりますと、ハクサイは周囲の植物を押しのけ、最終的には自分ひとりだけ残ろうとするため、しっかり土づくりをしておきませんと、隣のハクサイの養分を奪う「共食い」をしてしまいます。
ハクサイの植え方について
ハクサイは、涼しい気候を好みますので、気温が少し下がる時期(9月以降)に苗を植え付けます。
・株間約50cm、畝幅70cmが目安です。
・曇天の夕方に苗を植え付けます👉「ブクブク植え」
・隣の根に影響がでないよう、疎植します(離して植え付けます)。
・根鉢を崩さないように扱いますが、ほんの少しだけパタパタと土を叩いて定植しますと、根が広がりやすくなります。
木嶋博士のワンポイントアドバイス
ハクサイは、本葉3~4枚ほどで移植をしませんと弱りやすく、種まきから栽培されたことがある方は、苗づくりが難しいと思われたことはないでしょうか。
木嶋先生によりますと、ハクサイは本当は直まき栽培が向いており、根がまっすぐ伸びて、移植栽培よりもずっと育てやすいのだそうです。
そうはいうものの、種まき時期の8月は高温が続きますので失敗するリスクが高いため、寒冷紗のトンネルで畝を覆うことで害虫を防ぎ、ハクサイが好む涼しい環境をつくって生長の手助けをします。
ブロッコリーの育て方
土づくりについて
木嶋先生によりますと、ブロッコリーはハクサイほど肥料をあまり必要としないので、土づくりはハクサイほど気をつかわなくても大丈夫なのだそうです。
ハクサイは、勢いよく葉数を増やして巻いてゆきますので、たくさんの養分を欲しますが、ブロッコリーは光合成で体を大きくしてゆきます。
ブロッコリーの植え方について
ブロッコリーの原種は地中海の岸壁にしがみつくように集団で育っていますので「密植」して育てるのがおすすめです。
なお、ブロッコリーもハクサイと同様、涼しい気候を好みますので、気温が少し下がる時期(9月以降)に苗を植え付けます。
・株間は通常40cmが目安です。肥えた土は20cmの株間でも育ちます。
・曇天の夕方に苗を植え付けます👉「ブクブク植え」
・畝にハコベなどの草が生えてくることがありますが、ほかの植物の助けも借りるとより育ちがよくなります。
木嶋博士のワンポイントアドバイス
ハクサイと比べますと、ブロッコリーの移植栽培は容易で、苗は強く、本葉が5~6枚出てから移植しても問題なく育ってくれます。
密植栽培でよく育ちますので、1か所に2株植えることも可能でよく育ちます。
ハクサイとブロッコリーの違い
ハクサイ | ブロッコリー | |
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特徴 | 排除型のため単体でよく育つ | 共栄型のため集団でよく育つ |
畝の高さ | ・水はけの良い畝「平畝」 ・粘土質「高さ10cm」 |
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元肥の目安 | ・牛ふん堆肥3kg/㎡ ・油かす300g/㎡※砂質の畑は2割増し、粘土質の畑は2割減 |
・夏野菜を育てていた畝の場合、堆肥や肥料は不要。痩せた畑の場合、牛ふん堆肥2kg/㎡、油かす200/㎡ |
株間 | 70cm | 20~40cm |
追肥 | 本葉10枚の頃とその3週間後に10g/1株の油かすを株の周囲に広くまく | 2~3週間おきに株の周囲に10g/1株の油かすをまき、土を株元に寄せる |
まとめ
農学博士の木嶋利男先生が紹介されている、ハクサイとブロッコリーの違いと、栽培のポイントについて ご案内いたしました。
野菜の原産地を辿りますと、同じ科の野菜でも育て方が違うことをおわかりいただけたかと思います。
家庭菜園で野菜を育てるさい、ルーツを辿って栽培しますと、より楽しくなるかもしれませんので参考にしていただきましたら幸いです。
[参考文献]