南部鉄器の鉄瓶で沸かした白湯は、まろやかで体がポカポカ温まり、お茶やコーヒーがグッと美味しく感じられます。
我が家の南部鉄器の鉄瓶は100年前のもので、夫の母の実家で代々使っていたものが、義母の嫁入り道具となり、そして私が引き継ぎました。
100年前の南部鉄器は、今でも現役で機能しています。
古いけれど古くない南部鉄器。
これは、人から人へと受け継がれる素晴らしい民藝です。
「南部鉄器」の歴史
南部鉄器の発祥は400年以上も前にさかのぼり、岩手県盛岡市がその起源とされています。
歴代の南部藩主の肥後を受けながら、職人たちはその技術を磨き、南部鉄器の「湯釜」「鉄瓶」の名声は茶の湯の発展とともに、全国に広がりました。
鉄瓶の表面に見られるブツブツしたイボのような「アラレ紋」は、砂で作った鋳型に銑鉄(せんてつ)を流し込む製法によって生まれ、この文様は、鉄瓶の表面積を広げ、保温効果を高める役割を果たしています。
まさに、これは先人たちの知恵の結晶ですね。
400年前から変わらぬ南部鉄器の鉄瓶が、私たちの時代まで受け継がれていることを考えますと、日本文化の素晴らしさが感じられます。
南部鉄器の鉄瓶で、お茶もコーヒーも極上の美味さに
南部鉄器で沸かしたお湯が美味しくなるという話をご存知でしょうか?
魔法のような不思議さがありますが、水道水を南部鉄器で沸かすと、実際に美味しさが増すように思います。
そのお湯で煎れたお茶やコーヒーは、格別です。美味しくなる理由は、鉄瓶の内側の鉄分が溶け出すため、まろやかで柔らかい味になるのだそうです。
「鉄分が溶け出すから水道水が美味しくなる・・・。」と理解しきれない部分もありますが、水道水に含まれる「塩素」を取り除くには、「鉄」が最も優れており、水道水に含まれる「カルキ」は、鉄瓶の内側に吸着するためカルキ臭がなくなります。
そういえば、我が家の鉄瓶は、カルキの白い湯アカがびっちりこびり付いています。
義母から鉄瓶を譲り受けた当初、無知だった私は この白い湯アカをみてゾッとしましたが、湯アカの付いている鉄瓶は、美味しいお湯を沸かすための「あかし」だったのです。
初めて「南部鉄器の鉄瓶」を使うときに行うこと(ならし作業)
初めて南部鉄器を使うときに行う「ならし作業」について、ご紹介いたします。
ならし作業の方法
① 南部鉄器の本体を軽く水ですすぎ、水を8分目くらいまで入れ、中火で沸騰させます。
② お湯が沸きましたら、そのお湯は捨てます。(その際、金気でお湯が濁っていることがあります。)
③ お湯を沸かして捨てる作業を2~3回繰り返しますと、無色になってきます。これで鉄瓶を使うことができます。
・空だきをしないようにします。
・弱火はお湯が濁る原因になりますので、中火にします。
「南部鉄器の鉄瓶」日常のお手入れ
日常のお手入れ「拭くだけ」
南部鉄器の日常のお手入れは、食器とおなじ扱いです。
表面に付いた水分をふきんなどで拭き、水気が残らないようにします。
日常生活で「南部鉄器の鉄瓶」を使うときのポイント
お湯を残さないようにしましょう
① 南部鉄器を使いましたら残ったお湯はそのままにせず、ポットなどに移しましょう。
長い時間、お湯を入れた状態にしておきますと、お湯が濁ったりサビが付く原因になるからです。
② 南部鉄器のフタをずらし、余熱や空だきをして内側を完全に乾燥させます。熱くなりますのでヤケドに気を付けてくださいね。
我が家は、フタをずらして中の水気を自然乾燥させています。
白い湯アカは落とさないで
南部鉄器を長く使ってゆきますと、白い湯アカが付いてきます。
この湯アカの膜が水道水を透明に保ち、お湯をとても美味しくする役目を果たしてくれますので、こすり落とさないようにしましょう。
「南部鉄器の鉄瓶」を美しくする方法
独特の艶(つや)を出す方法は、南部鉄器が熱いうちに水を濡らしてかたく絞ったふきんで拭きます。
お湯を沸かした後におこないますと、きれいな照りが出ます。
「南部鉄器の鉄瓶」のサビ付きをとる方法
鉄製品は、しばらく使わないとサビが付いてきます。
サビを取り除く方法は「煎茶」で煮出します。
「南部鉄器の鉄瓶」のサビとり方法
① 南部鉄器の中を水で軽くすすぎ、8分目まで水を入れます。
② 茶さじ1杯の煎茶を「お茶パック」に入れ、中火より弱めの火力で30分ほど煮込みます。
「南部鉄器の鉄瓶」のサビをとる時に気を付けたい点
① 噴きこぼれないようにフタを少しずらして、蒸気を抜きながら沸騰させます。
② 蒸発して空だきにならないよう気を付けましょう。
「南部鉄器の鉄瓶」を長期間保管する場合
鉄瓶とフタを完全に乾燥させて、新聞紙に包んで保管します。
「南部鉄器の鉄瓶」で気を付けたいこと
鉄瓶の内側の面を手で触らないようにしましょう。
使い続けるうちに内部に赤い斑点が現れて、その後白い湯アカの膜が出てきますが、この湯アカは、決してこすり落とさないようにします。
湯アカの膜が付きますと内面が赤く変色しますが、水は「透明」になり、お湯がより美味しくなります。
鉄瓶の「重さ」について
我が家の鉄瓶は100年前のもので、重さが約4kgと非常に重いため、お湯が満タンの状態で片手でコーヒーを煎れたり急須にお湯を注ぐのは至難の業です。
そのため、鉄瓶に注ぐ水道水の量を都度 調整しています。
また、火にかけた鉄瓶は取っ手が熱くなるため、ミトンをはめるなどの対策も必要です。
大昔の南部鉄器の鉄瓶は、現代において「取り扱いづらいもの」の部類に入るかもしれません。
しかし、使い続けるうちに、南部鉄器の鉄瓶の価値は便利さでないことを学び、「使わないほうがもったいない」と感じるようになりました。
今では姿かたちを眺めるたびに、その美しさに感動する日々を送っております。
「南部鉄器の鉄瓶」の敷き物
鉄製の南部鉄器は火にかけますと大変熱くなりますので、厚手の鍋敷きをお使いになると便利です。
わが家は 本間数勇商店さんのワラ鍋敷を使っていますが、和と和の相性は抜群で、よい存在感がでます。
オススメしたい「南部鉄器の鉄瓶」
岩鋳(いわちゅう)
岩手県盛岡市にある「岩鋳(いわちゅう)」は、1902年創業の、老舗中の老舗です。
岩鋳公式ホームページ
https://iwachu.co.jp/about/
岩鋳さんのオススメ鉄瓶
「南部鉄器 鉄瓶 7型 アラレ 黒焼付 11960」などが使いやすそうです。
ツルを倒すことができ、容量900mlの小ぶりの鉄瓶で、直火にもIHにも対応しています。
こちらの鉄瓶は内部がホーロー加工されていないため、普通に沸かしたお湯で鉄分を摂取することができます。
ホーロー加工とは、ガラス質の釉薬を鉄肌の表面に覆わせることですが、加工をしていないことによって、沸かしたお湯に鉄分が含まれます。
また、本体は約1.8kgと、我が家のものより半分未満の軽さのため、扱いやすいと思います。
南部鉄器の鉄瓶は一生使えるとはいえ、重さの理由で使わなくなってしまっては「宝の持ち腐れ」になってしまいますので、日常生活でお手軽に使えるサイズを選ばれると良いかなと思います。
釜浅商店(かまあさ商店)
東京はかっぱ橋道具街にある「釜浅商店」さんも、おすすめです。
なぜならスタッフさんの知識が高く、鉄製品について相談に乗ってもらえるからです。
わが家は15年前に釜浅商店さんにて、ごはんを炊く鉄鍋を購入しましたが、買った後も使い方やメンテナンスについて、詳しく教えていただきました。
「買って終わり。」のお店ではなく、買ってからがスタートになる、頼りになるお店です。
公式ホームページ
http://www.kama-asa.co.jp/
まとめ:「南部鉄器の鉄瓶」
岩手盛岡の鋳物屋さんから、世界に広まり愛されている南部鉄器の鉄瓶をご紹介いたしました。
お家に一つあれば、「飲む楽しみ」を味わうことが出来ます。
水道水を美味しいお湯に変えてくれる南部鉄器の鉄瓶で、飲む幸せを味わってみられてはいかがでしょうか。
※本記事は、岩鋳さんの公式ホームページを参考にさせていただきました。この場をお借りして、御礼申し上げます。
[参考サイト]
[関連記事]