極上のご飯を食べる秘訣は、良いお米、美味しい水、そして「おひつ」にご飯を入れることです。
炊きたてのご飯を「おひつ」に入れると、お米がツヤツヤして、ふっくらします。これだけで三倍飯が食べられてしまうほどです。
私の母は、どんなに美味しく炊ける炊飯器でお米を炊いても、炊飯器で保温することをしませんでした。
母の口癖は、「ごはんの美味しさが損なうから」でした。
幼少の頃から、このような環境で育った私は、今でもご飯が炊き上がったら、一刻も早く「おひつ」に入れることが習慣になっています。
きょうご紹介する内容です。
・おひつの使い方・お手入れ方法
・ご飯を美味しくするコツ
・使うときの注意点
・もしもの時の対策
・オススメのおひつ
このページが、おひつ生活を始めてみようかしらと思われている方のご参考になれば幸いです。
「おひつ」にご飯を入れると美味しくなる理由
貴重なものを入れる木箱「おひつ」
「おひつ」は、漢字で「お櫃」と書き、木で出来た貴重なものを入れる箱という意味があります。
お米は、昔も今も貴重ですね。現代のように、保存する手段が少なかった昔の人たちは、木の中に大切なごはんを入れるという知恵がありました。
昔はどの家庭にもあった「おひつ」。
それが使われなくなっていった理由は、炊飯器に保温機能が付いたこと、冷凍できるようになったことなど、保存の手段が増えたことが挙げられます。
しかし「便利さ」が、美味しいものに結びつかない場合もあるのではないかと、私は考えます。
それを証明してくれる民藝の一つが「おひつ」です。
ごはんが美味しくなる理由
前置きが長くなりましたが、おひつに入れるご飯はなぜ、極上になるのでしょうか?
長野は木曽の椹(さわら)で「おひつ」を作っている「志水木材(しみずもくざい)」さんの公式サイトで勉強させていただきましたので、ご紹介いたします。
おひつに入れたご飯は、ツヤツヤしてふっくら。お米本来の美味しさを最大限に引き出してくれます。
伝統的な製法の「おひつ」は、炊き立てのごはんに含まれる水分を、適度に発散させる力があります。
そしてあら熱を取り、適度な水分量になるよう、みずからコントロールしているのです。
※ 志水木材さんのページを参照して作成
おひつはまず、ご飯の水分を吸収してくれます。
しだいにおひつの中の温度が下がると、木に吸収された水分が少しずつ放出されて、ごはんのしっとり感が継続します。
これが「おひつ」の最大のメリットです。
わが家は、夜に炊いたごはんをおひつに移して、翌朝お弁当用として使っていますが、一晩たって冷めてしまっても、しっとりと美味しい状態が継続しています。
「おひつ」の使い方・お手入れ方法
初めて使用するとき
まず、「おひつ」のアク抜きを行います。
おひつにお水を張って、100cc程度の酢を入れてかき混ぜます。お酢の代わりにお米のとぎ汁でも同じ効果があるようです。
このまま2~3時間おいて、中の水を捨てて、軽く水洗いをしてから「おひつ生活スタート」です。
なお、アク抜きをせず、そのまま使うことも可能です。最初は渋みがご飯に移る場合がありますが、しだいに無くなります。
日常で使うとき
炊きあがったご飯を入れる前に、おひつの内側を水で湿らせます。
ぬれたフキンで拭いても良いですし、水を少し入れてフキンで拭いてもOKです。
なぜ、湿らせなければならないかというと、「おひつにご飯がくっつかなくなる」という理由と、もう1つは、「ごはんの匂いをしみ込みにくくするため」です。
炊き込みご飯などを入れると、具材の色でしだいに黒ずみが出てきますが、湿らせることでそれを防ぐことも出来ます。
使ったあとのお手入れ方法
おひつを使い終わったら、スポンジで水またはお湯で洗い、フキンで水気を拭き取ります。
白米だけでしたら、洗剤は使わなくても大丈夫。炊き込みごはんなどを入れて油が気になる場合は、台所用の中性洗剤を使います。
おひつの水気を拭き取った後は、水分がよく蒸発するように、口を上に向けて乾燥させてくださいね。
ただしメーカーによって、洗剤を使わないでくださいというところもありますので、取り扱い説明書どおりに使いましょう。
一番のポイントは、濡れたまま放置しないで、フキンで水気を拭き取って確実に乾燥させることで、カビやゆがみを防ぐことです。
「おひつ」でご飯を美味しくするコツ
ご飯が炊けたら、冷めるまえに「おひつ」に入れてフタをして蒸らします。
これが、ご飯の美味しさを保つポイントです。
季節にもよりますが、おひつに半日くらい入れておいても、パサパサになることもなく、しっとりふんわりしています。
おひつに移したごはんは、冷たくなっても美味しくいただくことができます。
なお、おひつは「保温する道具」ではありません。ご飯の美味しさを保つための容器ということを、忘れないようにしましょう。
使用上の注意点
ご飯を入れるだけで美味しくなる「おひつ」ではありますが、取り扱いに注意する点がありますので、ご紹介いたします。
長時間、水を入れないで
おひつの内側にお米がこびり付いてしまった場合、お水を入れてふやかし、こびり付きを取りやすくしますが、長い時間水に漬けないようにしましょう。カビや、腐食のもとになります。
温度変化に気を付けて
日(直射日光)が当たりやすい保管場所や、冷暖房の風が直接あたるようなところでの保管を避けましょう。
なぜなら「おひつ」の表面が急激に乾燥してしまい、ヒビ割れや変形の原因になるからです。
もしもの時の対策
すき間が出来て水漏れしてしまった!
おひつは木で作られているので、乾燥しすぎると水漏れしてしまう場合があります。
対処する方法は、おひつに水を張って10分くらい置いておくと木が膨張するので水漏れしなくなります。
ヤニが出てきた!
おひつは木で出来ているため、使っている間もずっと呼吸をしています。
ヤニはおひつに使う木(針葉樹)ならではのもので、気温や湿度が高くなると揮発(きはつ=液体が気体になること)します。
揮発したヤニはおひつの表面に付着し、ヤニと化します。
もしヤニが出てきた場合は、おひつをお湯に漬けてヤニを柔らかくしてから、度数の高いお酒(ウイスキー等)、薬用アルコールで拭き取ります。
この際、ヤニの染みが残ってしまいますが、ヤニのベタベタは取り除くことが出来ます。
黒くくすんできてしまった!
黒くなる理由は、使っている水道水の鉄分が多い場合があるそうです。
「おひつ」をはじめとする塗装をしていない木製の台所道具は、当初の色を保つことは出来ません。
カビが生えてしまった!
カビの胞子は、ずっと空中に存在していて条件が重なると繁殖します。
条件とは、
① ホコリ、チリ
② 温度20~35℃
③ 酸素
④ 湿度が70%以上 です。
梅雨の時期が、カビやすくなるので気を付けたいですね。
対策は、カビに根が生えないように早めに除去するしかありません。カビに気づいたら、乾拭きするだけでも除去することが出来ます。
なかなかカビが取れない場合は、根が生えている可能性がありますので、サンドペーパーでガシガシ削り取りましょう。
塩素系の漂白剤を使ってカビを死滅させる方法もありますが、木の色が落ちてしまうのと、カビの変色で美しくない姿になる可能性があります。
良さそうなおひつ3選
おひつは、杉、サワラ、ヒノキが主な材料です。それぞれ香りが異なりますので、お好みの木を選びましょう。
天然杉「若兆」カジトラ使用
わが家で使っている「おひつ」は、漆塗りの曲げわっぱおひつです。
漆で塗装されているので、中性洗剤で洗うことが出来て、カビが付きにくいというメリットがあります。
また、塗装されていないおひつより低価格です。
日々ご機嫌に使用していますが、欲を言うと、「木の香りがするタイプ」でも良かったかなと思うこともしばしばあります。
おひつは、一家に2つあっても良いと言われているくらいですので、もう1つ購入するなら「木曽さわら」など、塗装がないおひつと考えています。
木曽さわらの「木曽工芸」
木曽のさわらは、水に強く、軽く、おひつの材料としては最高です。
フランスをはじめ、世界的に評価が高い「木曽さわら」で作られたおひつは、家宝になりますね。
レンジが使える「ひのき」と「さわら」のコラボもあります
「ひのき」と「さわら」の両方を使用している贅沢なおひつです。
外輪の曲げ部分は、粘りのあるヒノキを使い、底板と上蓋は香りの上品なサワラを使っています。
このおひつは、何と電子レンジが使えます。
ご自宅の電子レンジのサイズに合ったものを選びましょう。
まとめ
実家を出て、独りで暮らしていたころ、私の家には「おひつ」がありませんでした。
日々の忙しさにかまけて、炊飯器の保温されたごはんを食べるたびに、「あー。美味しくない」と、何度思ったか分かりません。
おひつに入れたご飯を頂くとき、いつもワクワクします。なぜなら「極上のご飯を食べられるから。」その一言につきます。
ごはんを美味しくいただく一番の近道は、「おひつにご飯を入れるだけ」なのです。
どうぞおためしください。
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[参考サイト 志村木材株式会社]