秋深まる11月になり、朝と晩の寒さがこたえるようになってきました。
今回は、昔農家さんから学ぶ11月の農作業と、農事歴をご紹介いたします。
11月は暦の上では冬になりますが、本格的な冬の到来を前に、畑の冬支度をはじめましょう。
昔農家さんから学ぶ11月の農作業について
楓(かえで)が紅葉したら、落ち葉で腐葉土づくり
11月は 霜が降り、山が紅葉して、植物が冬の眠りに入る季節です。
昔農家さんは この時期に、畑に積もった枯れ葉を集めて腐葉土を作りました。
野菜の残ざの片付け
作物や野菜の残さを片付けるのもこの時期です。
残さをそのまま残しておきますと、病気が畑に残るなど「厭地(いやち)」の原因になったりしますので、昔農家さんは 静かな畑の中で、畑を清潔にして来年の農作業に備えていました。
連作障害対策
夏野菜の栽培が終わったこの時期は、畑を休ませる季節でもあります。
昔農家さんは、連作障害が見られたウネには、間作(かんさく)としてムギ類やナタネを栽培しました。
11月の農作業
時期 | 農作業 | |
立冬 (二十四節気) |
11月7日頃 | [一般地] ・タマネギ、キャベツ、エンドウ、ソラマメの定植 ・ダイコン、ハクサイ、コマツナ、ニンジンなどの中耕・追肥 ・ムギ類、ナタネの種まき ・アスパラガスの定植 |
地始めて凍る (七十二候 |
11月13日頃 | [暖地] ・タマネギ、キャベツ、エンドウ、ソラマメの定植 ・ダイコン、ハクサイ、コマツナ、ニンジンなどの中耕・追肥 ・ムギ類、ナタネの種まき ・アスパラガスの定植 |
小雪 (二十四節気) |
11月22日頃 | ・秋冬野菜の防寒対策 ・堆肥づくり |
※地域によって前後します。
参考文献 久保田豊和著「新版 暦に学ぶ野菜づくりの知恵 畑仕事の十二ヵ月」
11月の農事歴
私たちは現在 太陽暦にて暮らしておりますが、江戸時代以前の農家さんたちは、旧暦にて農作業を行っておりました。
現代においても旧暦の農事を参考にしますと、野菜づくりの良き指標となるかと思いますので、ご紹介いたします。
11月の農事歴
1日 | |
2日 | 楓蔦(もちじ)黄なり (七十二候:第五十四候) |
3日 | |
4日 | |
5日 | |
6日 | |
7日 | 立冬(旧暦10月1日頃) 二十四節気 |
8日 | |
9日 | 山茶始めて開く (七十二候:第五十五候) |
10日 | |
11日 | |
12日 | |
13日 | 地始めて凍る (七十二候:第五十六候) |
14日 | |
15日 | |
16日 | |
17日 | 金盞香う(きんせんかにおう) (七十二候:第五十七候) |
18日 | |
19日 | |
20日 | |
21日 | |
22日 | 小雪(しょうせつ) (二十四節気) |
23日 | |
24日 | |
25日 | 虹かくれて見えず (七十二候:第五十八候) |
26日 | |
27日 | |
28日 | 朔風(きたかぜ)木の葉を払う (七十二候:第五十九候) |
29日 | |
30日 |
参考文献 久保田豊和著「新版 暦に学ぶ野菜づくりの知恵 畑仕事の十二ヵ月」
第五十四候_楓葉黄なり(もみじきなり―新暦11月2~6日頃)
もみじは、「揉み出(もみず)」が変化した言葉と言われており、草木の葉の色が揉み出されてくるという意味で、特定の木の名前ではありませんでした。
それが次第に、美しく紅葉する楓(かえで)のことを示すようになったと言われています。
この時期は、秋から冬へ、季節が大きく変化してゆきますので、昔農家さんは 草木の色合いを眺めながら過ごしていたことでしょう。
二十四節気_立冬(りっとう―新暦11月7日頃)
暦ではこの日から冬になります。
毎年、木枯らし1号が観測されるのはこの時期です。
第五十五候_山茶始めて開く(つばきはじめてひらく―新暦11月7日~11日頃)
山茶花(さざんか)が咲き始める時期です。
七十二候では、まず冬を告げる花として「山茶花(さざんか)」をあげています。
「山茶(さんさ)」は、椿の漢名ですので、「山茶始めて開く」も、「つばき」と読ませているのでしょう。
昔農家さんは、山茶花が咲き始めると、冬の訪れを感じていたのでしょうね。
なお現在は、山茶花と椿は区別されていますが、昔はよく混同されており、厳密に、区別をしていなかったという説があります。
ちなみに、ナメクジは椿の花を嫌う傾向にあるようですので、葉や実を細かく刻んだものを野菜のまわりに置いて忌避する対策があります。
その際 気を付けたいことは、椿(ツバキ)や山茶花(サザンカ)などのツバキ科には、毛虫(チャドクガ)が付いていることがあり、毛に触れると激しい痒みや湿疹が出る場合がありますので、手袋などをはめて処理なさってくださいね。
第五十六候_地始凍(ちはじめてこおる―新暦11月12日~16日頃)
大地が凍りはじめ、霜柱が立つ時期です。
地中の水分が、地表で凍ってできる細い氷の柱は、畑で見られる貴重な自然現象ですね。
なお、白菜をはじめとする冬野菜は、霜が降りてから頂くと、甘味が増してより美味しくなります。
第五十七候_金盞花香う(きんせんかにおう―新暦11月17日~11月21日頃)
「金盞花」は、水仙をさしているようです。
水仙は、早春から咲くイメージがありますが、早咲きの品種はこの頃から咲き始めます。
なお水仙は、「金盞銀台(きんせんぎんだい)」とも呼ばれており、「金盞」は、金の盃のことで、中央の黄色い部分を金の盃に、花びらを銀の台に見立てていました。
この時期に咲く水仙は、「雪中花」という異名ももっています。
二十四節気_小雪(しょうせつ―新暦11月22日頃)
寒さはそれほど強くはないものの、落葉樹の葉が散り始め、雨が雪に変わる一歩一歩 冬へ向かう時期です。
北国や山岳地域では雪が見られるようになり、風に運ばれてきた雪が平地でもちらちらと花びらのように舞いはじめます。
第五十八候_虹かくれて見えず(虹蔵不見=にじかくれてみえず―新暦11月22日~26日頃)
二十四節気の「小雪」は、雨が雪に変わる頃という意味で、雨が降らない曇天が続くため、虹を見かけなくなります。
第五十九候_朔風木の葉を払う(きたかぜこのはをはらう―新暦11月27日~12月1日頃)
北風が木の葉を吹きはらうように落としてゆく時期です。
昔、この時期は、 昴(すばる)の出入りによって天気が変わると信じられていたそうで、とくに11月の中旬(旧暦10月中旬)の夜明け頃、昴が西に沈むときに吹く風は、「星の入東風(ほしのいりこち)」と呼ばれます。
昴は牡牛座のプレアデス星団のことで、「六連星(むつらぼし)」とも呼ばれているように、6つ連なって見えることから「統ばる(すばる)」という名前が付けられました。
オリオン座の三ツ星を取り囲む4つの星のうち、右上の星(ペラトリクス)と、さらにその右上に明るく輝くアルデバランを結びます。その線を右へ延ばし、線と同じくらいの距離のところにぼんやりと見える星の集まりが昴です。
ご参考:11月の農事
この章では、現在私たちが行うことが出来る伝承農法をご紹介いたします。
落ち葉床づくり
畑のウネに穴を掘り、落ち葉を敷き詰める方法です。
農学博士の木嶋利男先生の落ち葉床の作り方
畑に落ち葉を埋める「落ち葉床」の作り方|畑にもたらす3つのメリットをご紹介いたします
生ゴミを畑のたい肥に
菌ちゃん先生こと、吉田俊道さんが紹介されている生ゴミをコンポストにする方法です。
わが家は野菜を栽培するようになって以来、生ゴミをたい肥にし、畑に還しております。
野菜がよく育つかと思いますので、参考になさってください。
吉田俊道さんの生ゴミコンポストの作り方
生ゴミコンポストの作り方|菌ちゃん先生の「生ゴミ漬け物投入法」
連作障害対策
緑肥(りょくひ)と言われる植物で、土壌病害虫を減らす方法です。
農学博士の木嶋利男先生の連作障害対策
「緑肥」で連作障害対策!ネコブセンチュウ・ネグサレセンチュウに効果的です
まとめ
11月の農作業と農事歴について、ご案内いたしました。
昔農家さんは季節を肌で感じながら農作業を行っていました。
現代を生きる私たちも、自然の声に耳を傾け、肌で感じながら、気持ちよく畑仕事を行ってゆきたいですね。
[参考文献]
[11月のお菓子]
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