家庭菜園で栽培したダイコンやニンジンの根が腐っていたり、キュウリやナスの根にコブが付いていたことはないでしょうか。
もしかするとそれは「線虫(センチュウ)」という害虫によるものかもしれません。
線虫は昆虫ではなく、野菜などの植物にダメージをあたえる「害虫」と呼ばれる虫のことを言います。
今回は、線虫(センチュウ)とはどういう害虫なのか、その種類、被害を予防する方法、効果的な植物をご紹介いたしますので、ご参考にしていただければ幸いです。
線虫(センチュウ)とは?
土の中にどこにでもひそむセンチュウ
センチュウ(線虫)は線形動物の総称で、土の中にどこにでもひそんでいる害虫です。
発生する時期は3月~11月の長い期間にわたります。
野菜にダメージをあたえるセンチュウはおもに、ネコブセンチュウ、ネグサレセンチュウ、シストセンチュウの3種です。
センチュウに寄生されると野菜の根っこにコブができたり、根が腐る症状がでて、株がしおれたり生育が遅くなります。
そのため収穫量も少なくなり、最後には枯れてしまうこともあります。
センチュウはどれも細長い糸状で、体調は1mm以下です。無色に近いため肉眼で見つけにくく、発生初期は地上部で判断しづらく、野菜が軽くしおれた時点で多発している可能性があります。
線虫がつく理由とその種類
センチュウがつく大きな理由は「連作」です。連作するとセンチュウの密度が高くなり、野菜に被害がでます。
この章では代表的なセンチュウ3種をご紹介いたします。
コブが連なる「ネコブセンチュウ」
ネコブセンチュウは、ほとんどの野菜に寄生して根っこにコブをつくります。
コブが多くなると道管が圧迫されて水の吸い上げが悪くなり、生育が阻害されてしまいます。
ウリ科、ナス科などを栽培するとネコブセンチュウ密度が高くなります。
根が腐る「ネグサレセンチュウ」
ネグサレセンチュウは、野菜の根に侵入すると組織内を移動して根を腐らせてしまいます。
侵入された部分はこげ茶色に腐敗して、病原菌が侵入する原因になります。
ダイコンやニンジンなどの根菜を栽培するとネグサレセンチュウが増えやすくなりますが、イチゴやレタスなどに付く場合もあります。
卵がつく「シストセンチュウ」
シストセンチュウは、卵が土ぼこりと一緒に飛んで広がります。農具や靴に付いて広がる場合もあります。
このセンチュウは、ジャガイモやマメ類の根に寄生して生育を阻害します。
メスのセンチュウは、根の表面に体を出して球状に膨らんで自らの体内に産卵します。(この時期に黄色くなります)メスは数百個の卵を抱えたまま死んで、シストと呼ばれるかたい殻の嚢胞(のうほう)を作ります。
線虫の予防対策
農学博士の木嶋利男先生によりますと、同じ科や同じ種類の野菜は3~5年ほど栽培期間を空けるのが良いとおっしゃっています。
センチュウの密度が上がる野菜を栽培するときは対策として、センチュウ退治に効果のある植物を一緒に植えたり、輪作や間作を加えて密度を下げるようにします。
ネコブセンチュウに効果的な植物
ネコブセンチュウ類は、マリーゴールドやクロタラリア、エビスグサ、ギニアグラスを栽培すると減少します。
ネグサレセンチュウに効果的な植物
マメ科の野菜がおすすめです
マメ科の根にコブがつくことがあります。これは「根粒菌」によるものです。根粒菌は空気中の窒素を固定して、野菜が利用できるようにする力があり土を肥沃にします。
マメ科のラッカセイ、クロタラリア(タヌキマメ)は、ネグサレセンチュウの増加を防ぐ効果がありますので、ナス科のトマトやピーマンと混植するのがおすすめです。
ソルゴーも効果的です
ソルゴーなども効果が高いのでおすすめです。
シストセンチュウに効果的な植物
シストセンチュウ類は、クローバー類を育てると増加を防ぐ効果があります。なぜならメスの成虫はクローバー類の根に侵入すると成長できなくなる性質があるからです。
善玉のセンチュウを増やす「米ぬか」
植物にダメージを与える寄生型のセンチュウのほかに、善玉の自活型センチュウもいます。
自活型を増やすと、寄生型の増加を抑えることができます。自活型は乳酸菌をエサにするため、米ぬかをすき込んで3~4週間放置すると増やすことが出来ます。
線虫が発生したらどうするの?
センチュウ類を見つけて捕殺することは難しいと言われています。
被害を受けても野菜を栽培している間はなかなか気づくことが出来ませんので、予防をすることが大切です。
次の章で、センチュウ退治に良いと言われている作物をご紹介いたします。
線虫退治に効果のある植物
アブラナ科の野菜をすき込む
センチュウ被害が出た場合、アブラナ科の野菜を栽培して残渣(ざんさ)をすき込みんだり、輪作に組み込みますと、3種類のセンチュウ密度を下げることが出来ます。
シストセンチュウの卵は丈夫で何年も土の中に残りますが、徐々に密度は下がってゆきます。
アブラナ科には辛み成分「ブルコシノレート」が含まれていますが、これが酵素や微生物によって分解されますと「イソチオシアネート」を発生し、殺菌・殺虫効果を発揮しますので、土壌病原菌やセンチュウ類を駆除します。
アブラナ科野菜の量
1ウネに鋤き込むアブラナ科野菜の量は、1ウネで作った半分程度です。ブロッコリーの茎、葉すべて鋤き込んで構いません。
センチュウ類に効果的なアブラナ科
🥦 カラシナ
🥦 タカナ
🥦 ブロッコリー
🥦 キャベツ
マリーゴールド
木嶋先生によりますと、マリーゴールドには根から侵入したセンチュウに殺虫物質を分泌して殺す力があるとおっしゃっています。
マリーゴールドを畑にすき込んでもセンチュウ防除の効果がありますし、ウネの周りや通路に植えておくと、「バンカープランツ(おとり作物)」として多くの天敵を増やすこともできますので、有機・無農薬栽培の心強い味方です。
なおマリーゴールドは、フレンチタイプより、アフリカンタイプが効果があると言われています。
イネ科の緑肥作物
エンバク、ライムギ、ソルゴー、ギニアグラスはネコブセンチュウとネグサレセンチュウ両方の増殖を抑制する効果があります。
背の高い品種で畑を縁取って風よけとしても使う「バリアプランツ(障壁作物)」とすることも出来ます。
まとめ
家庭菜園で野菜を栽培していますと、ヒラヒラと飛来する害虫や土の中にひそむ害虫と悩みがつきませんね。
土の中にどこでもひそんでいる線虫を完全に退治することは難しいですが、アブラナ科の野菜を栽培してセンチュウの密度を下げたり、マリーゴールドやクローバー、イネ科の緑肥作物で畑を守ることは可能です。
有機・無農薬栽培に心強い植物を利用しながら、害虫に負けない丈夫な畑をつくってゆきたいですね。
[参考文献]
[マリーゴールドアフリカンタイプ]
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