農学博士の木嶋利男先生が紹介されている、「ナスとエンドウの交互連作」について、ご案内いたします。
ナス科の野菜、マメ科の野菜を毎年おなじ場所で栽培してゆきますと、収穫量が減ったり、病気が多発する、いわゆる「連作障害」を引き起こすと言われていますが、木嶋先生によりますと、相性の良い野菜を交互に育ててゆくと、連作が可能になるのだそうです。
今回は、ナスの後作にエンドウ、エンドウの後作にナス栽培の交互連作についてご紹介いたします。これらの野菜を繰り返し栽培し続けてゆきますと、生育不良が減り、病気になりづらくなることがあるのだそうです。
ナスの後作にエンドウ、エンドウの後作にナスが適している理由についてもご案内いたしますので、参考になさってください。
ナスの後作野菜にエンドウがおすすめの理由
連作障害がおこりやすいナス科
ナスを同じ場所で毎年育てますと、土壌病害による連作障害が多くなります。
またマメ科のエンドウは、根っこから生長抑制物質を分泌しますので、連作し続けることにより生育が悪くなります。
しかしながら、農学博士の木嶋利男先生は、ナスとエンドウを交互に連作し続けることにより、土壌病原菌の密度が下がっていくと述べられています。
土壌病原菌の密度を下げるマメ科
木嶋先生は、「マメ科植物にはナス科の土壌病原菌の密度を下げる働きがある」と述べられています。
エンドウが出す生長抑制物質は、あとに雑草や緑肥作物を生やすと効果が抑えられることも知られており、ナスでも同様の効果が得られる可能性があるのだそうです。
科学的に解明されていないない現象のようですが、非常に興味深いですね。
昔農家さんから学ぶ「ナスとエンドウの交互連作」
じつは、ナスとエンドウの交互連作は、昔から農家さんが行われていた栽培です。
茄子も豌豆(えんどう)も、兩種(りょうしゅ)ながら連作を忌む(いむ)修正があります。
私は茄子を栽培したあとに、十一月頃に豌豆を播き(まき)、翌年六月、豌豆を取りはらつたあとに、また茄子を植ゑるという方法をとつてゐます。
「家の光」昭和15年11月号「農家の實験」細川初枝さんの投稿
出典「昔農家に教わる 野菜づくりの知恵とワザ」木嶋利男著
ナスとエンドウの交互連作の方法
ナスとエンドウの交互連作は、一般的な栽培と同じ方法です。
※ 栽培期間は一般地の気候でご案内いたします。
6月上・中旬「エンドウの収穫と土づくり」
6月にエンドウを収穫した後、残渣(ざんさ=葉、茎、根)をその場に鋤き込み、たい肥を施し土づくりを行い、2週間後にナスを植え付けます。
6月下旬~11月
秋ナスを中心に栽培します。
多様な微生物が増殖し、2年目から病原菌が増えにくくなります。
11月中旬
ナスの株元、株の間にエンドウをまきます。(株間30cmで1か所に2~3粒)
ナスの株は枯れてきますが、エンドウの寒風よけになり、春は支柱の代わりになります。
翌年の6月上・中旬「エンドウの収穫と土づくり」
翌年の6月、エンドウを収穫した後、残渣(ざんさ=葉、茎、根)をその場に鋤き込み、たい肥を施して土づくりを行い、2週間後にナスを植え付けます。
この交互連作を毎年続けてゆきます。
2021~2022年レポート:ナスとエンドウの交互連作
ナスの連作2年目(2021年)
2021年春から同じウネで、ナスとエンドウの交互連作を始めてゆこうと思います。
今年はナス栽培が2年目で、現在ナスの花が咲き始めたところです。
6月になり、収穫が始まりました。
今のところ順調に育っています。
2021年10月
2021年10月19日
7月の終わりに更新剪定を行ったところ成功したようで、秋ナスがよく採れています。
ナスの木をこのまま残し、そろそろエンドウ栽培の土づくりを始めようと思います。
2021年10月23日
後作野菜のための土づくりを行いました。
木嶋先生がおすすめされている連作障害対策になる元肥は、牛ふんと米ぬかです。
交互連作を行うウネは、長さ約7m・ウネ幅約80cmで、牛ふんを約15kg、米ぬかを約1kg、そしてエンドウのコンパニオンプランツの玉ねぎのために骨粉を500gほど施しました。
畑にスケールがないので米ぬかと骨粉は少し多かったかもしれません。
なお、エンドウとソラマメの寒風よけのために、ナスは来春まで引き抜かずにそのままの状態にしておこうと思います。
ナスの木を生やしたままですので、耕しづらかったです。
エンドウとソラマメは、ポットに種をまいています。
まだ発芽はしていませんが、11月になったらこのウネに定植します。
2021年11月
2021年11月12日
11月になりました。
土づくりから約3週間経ちましたので、種まきして育てていたタマネギの苗を植え付けました。
写真右側の緑の細い葉がタマネギの苗です。
エンドウマメは、現在育苗中で、草丈がもう少し高くなりましたら定植します。
2021年11月16日
種をまいて育てていたエンドウ豆の草丈が20cm近くのびてきましたので、ナスの株元に植えつけました。
ウネの右側がエンドウで、左の細い緑の葉がタマネギです。
タマネギは、エンドウのコンパニオンプランツとして混植します。
2021年12月
2021年12月10日
12月のエンドウの様子です。
今のところ順調に育っています。
2022年2月
2月9日
寒さ対策をあまり行っていなかったため、エンドウがほぼ全滅してしまいました。
ササの枝などで 寒風からガードすれば良かったです。
今年の秋は、しっかり寒さ対策を行います!
このままエンドウを育てられないのも悲しいので、2月蒔きが可能な「つるなしエンドウ」をネットで購入しました。
種が届いたら、数日後に種まきをします。
2月17日
畑のエンドウをすっかり枯らしてしまったため、2月に種まきが出来るスナップえんどうの種を購入しました。
ポットに、エンドウとコンパニオンプランツのクリムソンクローバー、エンバクを一緒にまきました。
日当たりの良い窓際に置いて、発芽を待ちます。
日中の温度は23℃くらいです。
どうか、芽が出ますように。
2022年3月
3月25日
完全に枯れたと思っていたエンドウですが、根が生きていたようで、すべての株が復活しました。
ふたたび葉が生えてきました。
今年は、私の住んでいる地域(千葉県)でも何度も雪が積もったり、寒波にみまわれましたが、この生命力には驚きです。
ソラマメも花が咲きました。
親株は枯れましたが、側枝がたくさん生えてきたのです。
寒波で全滅したと思って種まきしたエンドウ、エンバク、クリムソンクローバーです。
この苗は、別のウネ(キュウリ)に植えることにしました。
キュウリと一緒に育てますと、支柱とネットを共有することができそうです。
2022年4月
4月になりました。
全滅したと思っていたエンドウは、すべての株が復活し、少しずつ伸びてきました。
ただ、地上部が枯れてしまったため、同じ畑のほかの方々より、生長は遅れている模様。
同じウネのソラマメです。
ソラマメのほとんどの親株も、寒さで黒くなって傷んでしまいましたが、わき芽から側枝がたくさん出てきて花が咲きました。
コンパニオンプランツの玉ねぎです。
定植した苗が小さめでしたので、苗を2本ずつ植える方法で育てています。
すこし結球してきましたが、大きなタマになるのは難しいかもしれません。
4月13日
ついに、エンドウの花が咲きました。
2022年5月
2022年5月1日
エンドウの実が付きました。
そろそろ収穫できそうです。
ソラマメの実も付きました。
今年は、ソラマメの先端にアブラムシがあまり付きませんでした。
そばに植えているコンパニオンプランツにテントウムシがたくさんいるからかもしれません。
2022年5月8日
エンドウの収穫が始まりました。
びっくりするほど甘いエンドウになり、先日 遊びにきた親戚の子どもが果物みたいと喜んでいました。
2022年5月19日
まだエンドウを収穫することが出来そうでしたが、後作のナスの準備を始めたいので、終わりにしました。
この数日で、ウネを片付けようと思います。
バンカープランツのエンバクが旺盛に育ちましたので、ものすごいことになっておりますが、敷きワラなどにして、有効に使うことができそうです。
そして、昨年育てていたナスの木がまだ残っているのがお分かりになりますでしょうか。
寒風よけにはなりませんでしたが、エンドウがナスの木を蔦って伸びてくれてました。
そのおかげで、誘引の作業をほとんど行わずにすみました。
ナスの木も、サブ的な支柱になることが分かりましたので、今年も収穫が終わったナスの木は、引き抜かずにそのままにしておこうと思います。
— つづきは、2022年レポートの章を、ご覧になってください。—
2022~2023年レポート:ナスとエンドウの交互連作
エンドウの収穫が終わりましたので、ナス栽培(3年目)の土づくりを行いました。
連作をするための土づくりについて
木嶋先生によりますと、連作を行うさい、もっとも大切なことは「畑づくり(土づくり)」なのだそうです。
連作障害対策といいますと、堆肥や元肥を施すことが重要と思っておりましたが、畑全体の立体構造がとても大切なのだそうです。
土の三層立体構造
栽培に必要とする作土層は通常 18~20cmの深さで、その範囲の土がきれいな三層立体構造を保っていますと、どんな野菜でもよく育つのだそうです。
※畑の土の立体構造づくりについては、別のページにてご案内する予定です。
2022年5月
エンドウの収穫がおわりましたので、いよいよ3年目のナス栽培に挑戦です。
木嶋先生は、連作障害対策の土づくりに有効な堆肥として、牛ふんや米ぬかを紹介されていますので、前作のエンドウと同様に、それらを使うことにしました。
牛ふん堆肥
米ぬか
まず、ウネ全体に牛ふん堆肥をまき、その上に米ぬかを振りかけました。
牛ふん堆肥の量は、約7メートルの長さのウネ(ウネ幅は約100cm)に対して1袋分(15kg)、米ぬかは地表に雪が軽く積もる程度に振りかけました。
米ぬかは、悪玉のセンチュウを減らす効果があるのだそうです。
クワで耕して1か月ほどおきます。
なお、2週間後に1回だけ耕し、酸素を供給します。
わが家は、野菜の残渣など、基本取り除きませんので、たくさんの根や葉、茎などが残っています。
野菜の残渣は、病原菌のすみかになってしまう場合があるようですので、それらを分解させるために、牛ふん堆肥を施しました。
牛ふん堆肥はセルロースが豊富で、セルロースの分解が得意な微生物がたくさん含まれているのだそうです。
牛ふん堆肥を土に鋤き込みますと、セルロース分解酵素を働かせ、野菜の残渣と堆肥の分解が進みます。
2週間後に耕して酸素を供給しますと、分解がさらに加速するのだそうです。
— 引き続き、レポートいたします。—
まとめ
ナス科の野菜、マメ科の野菜は 連作するのを避け、「輪作」したほうが良いとされていますね。
木嶋利男先生の著書に、エンドウの後作はナス、ナスの後作はエンドウがおすすめと記されていたのを読んだ時は、にわかに信じがたかったのですが、科学的に解明されていないことを自ら試してみようと思います。(野菜作りの醍醐味ですね)
わが家は2021年春から、実験的に ナス(ほかにシシトウなどのナス科)の栽培を始め、秋にエンドウ、ソラマメ、コンパニオンプランツの玉ねぎを育ててゆく予定です。
この栽培は、長い年月をかけてのレポートになるかと思いますが、ご興味のある方は、ときどきご訪問いただければ嬉しく存じます。
[参考文献]
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