家庭菜園の野菜作りで悩ましい害虫被害は、薬剤で一発駆除することはできますが、できれば無農薬で美味しい野菜を育ててゆきたいですね。
今回は、農学博士の木嶋利男先生が紹介されている、「害虫が寄り付かない畑づくりの対策とポイント」について、ご案内いたします。
木嶋先生は、「無農薬で害虫被害を少なくするには、畑の環境を整えることが大切です。」と、紹介されています。
それは、大げさなことをするのではなく、基本的な対策をひとつひとつ行うことで、豊かな畑に変わってゆきますので ご参考になさってくださいね。
害虫の種類
害虫には、アオムシのように 野菜の葉をムシャムシャ食べる「食害タイプ」、アブラムシ類などの野菜の汁を吸う「吸汁(きゅうじゅう)タイプ」があります。
野菜を食べる食害タイプの害虫
※ ハスモンヨトウガの幼虫
モンシロチョウの幼虫アオムシや、キアゲハの幼虫などは 野菜の葉っぱ、茎、花、実、根をかじって傷を付けます。
その被害が大きくなりますと、野菜の生育が悪くなり 収穫できなくなってしまうこともあります。
また、害虫が付けた小さな傷に病原菌が入り込むこともありますので、気を付けたいところです。
野菜を吸汁するタイプの害虫
※ アブラムシ
野菜が病気になる原因の一つに、害虫の媒介によるウイルス感染があります。
アブラムシ類、コナジラミ類、アザミウマ類などが野菜を吸汁し、病気を感染させ、さらに健康な野菜を吸汁することによって、伝染してゆきます。
畑の害虫対策について
基本的な害虫対策は、「見つけ次第 補殺する」ことです。
害虫がどんどん増えますと対処が難しくなりますので、卵をつぶすか、産卵された葉を取り除き、処分しましょう。
害虫は繁殖能力が高く、あっという間に 野菜に広がりますので、日頃から野菜を観察して見つけたらすぐに補殺しましょう。
木嶋先生がおすすめされている「半殺し」で、昆虫寄生菌を増やす方法もあります。わが家はおもにこの対策を行っています。
アブラムシは空から落ちてきますので、目合い0.8mm以下の防虫ネットで覆いますと効果的です。また石鹸油スプレーを散布しますと死滅します。
害虫が狙われやすい野菜、健康な野菜がもつ力
健康な野菜は害虫が付きません
野菜の害虫被害をおさえる対策に、防虫トンネルやコンパニオンプランツ栽培などがありますが、木嶋先生は、「まずは野菜を健康的に育てることが大切です。」と、述べられています。
生ごみ先生でお馴染みの吉田俊道さんの著書やDVDを拝見しますと、防虫ネットを張らなくても害虫の被害がほとんどない、美味しそうな野菜を栽培されています。
害虫に狙われやすい野菜
木嶋先生によりますと、害虫に狙われやすい野菜について、次の二つを挙げられています。
1.栄養不足の貧弱な野菜
2.肥料をとりすぎたメタボな野菜
元気で健康な野菜は体内に「防御物質」をつくり、自分で身を守っているのだそうです。
たとえば、キャベツなどアブラナ科野菜のグルコシノレートという辛み成分、トマトのリコピン、タマネギのアリシンも防御物質で これらの成分は害虫にとって毒になります。
しかし、不健康な野菜は防御物質の量が少なくなり、害虫の腸内細菌が分解してしまいますので、無毒化の野菜になってしまいます。
健康な野菜=害虫にとって毒になりますので、野菜をかじった害虫は死に、親も産卵場所に向かないと判断して よそへ行ってしまいますので、健康的な野菜づくりが害虫を遠ざける一番の対策と言えるでしょう。
健康な野菜をつくる秘訣とポイント
肥料分は適切な量をほどこし、野菜に合った栽培をすることが 健康な野菜を育てる秘訣です。
また、旬に育てることも大切で、適期を外した栽培は 野菜の防御物質の量が少なくなります。
木嶋先生は、著書にて次のようなことを紹介されています。
健康な野菜は害虫に集まられず、おいしくて栄養価も高くなります。
野菜に含まれる防御物質は人間も適量であれば健康にいい成分です。引用「農薬に頼らない病虫害対策 26頁」
無農薬で家庭菜園!害虫が寄り付かない畑づくりの対策とポイント
それでは、害虫が寄り付かなくなる畑づくりの対策とポイントについてご紹介いたします。
木嶋先生は、「さまざまな生き物が生息する生態系のバランスが取れている環境が大切です。」と、紹介されています。
益虫・天敵を増やす畑づくり
畑は、害虫を捕食する「天敵」が必ず現れます。
農薬は、害虫駆除に役立ちますが、同時に天敵も殺してしまいます。
また、ひとつの作物だけを育てたり、草がない地面が露出してツルツルしている畑も、生態系のバランスが悪くなり病害虫が出やすくなります。
天敵を増やす おすすめの対策は、複数の野菜を育てる「コンパニオンプランツ栽培」です。
肥料のやりすぎに気を付けて
虫は、からだづくりのために「窒素」を必要としますので、窒素の豊富な植物に集まる性質があります。
野菜の肥料には窒素分が多く含まれていますので、肥料をほどこし過ぎますと害虫をまねいて防御力も弱まってしまいます。
肥料過多の野菜は害虫の幼虫が育ちやすいので産卵されやすく、悪循環におちいります。
私も反省しなければならないところですが、家庭菜園は肥料を多く施しがちです。野菜の様子を見て、葉の色が濃すぎたり枝が茂りすぎている時は、施肥を控えめにしましょう。
野菜の葉の裏・陰をチェック
無農薬で害虫駆除する基本の対策は、見つけたら補殺することです。
虫は、敵から身を守るために野菜の葉の裏や陰に潜みますので見逃しやすくなり、知らないうちに卵を産み付けられて幼虫が孵化し 増殖します。
卵の段階で駆除できればしめたものです。被害が抑えられますので くまなくチェックしましょう。
やっかいな雑草も天敵にすみかに
とくに夏の時期にどんどん生長する雑草は、家庭菜園の敵とお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、引き抜いて除草しないほうが畑にとってよい環境になります。
害虫は草むらを住み家にしているものも多くいますが、天敵もやってきて害虫を捕食してくれるからです。
また、草があることで 野菜への食害が及ばなくなることもありますので、ほどよく残しておくのがおすすめです。
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害虫に気を付けたい土の中
土の中に生息する病害虫センチュウ類などは、野菜を育てる前に予防対策しましょう。
無農薬で土壌病害を予防する対策は、野菜のざんさ・米ぬかをほどこして寝かせておく方法があります。
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まとめ
農学博士の木嶋利男先生が紹介されている「無農薬で害虫が寄り付かなくなる畑づくりの対策とポイント」について、ご案内いたしました。
私は無農薬で野菜を栽培しておりますが、害虫が多発した時など、薬剤に頼りたくなることもあります。
しかし、畑に天敵が少ないのだろうと気持ちを切り替えて野菜のそばにお花を植えたり、肥料の量に気を付けたりしています。
害虫が少ない畑にすることは時間がかかるかもしれませんが、基本的な対策コツコツ行って、美味しい野菜を育ててゆこうと思っております。
[参考文献]